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変化する顧客とCRM「リスクマネジメントBusiness12月号」 連載

category
公開論文
writer
金森 努
series
その他の寄稿
date
2001年12月 6日
themes
CRM,顧客インサイト

<顧客情報活用は諸刃の剣>
筆者の職場での一日は、PCとメールソフトを立ち上げた後のジャンクメールの削除で始まる。今日もまた1件。

「メールマガジン第3号!」と無邪気なタイトルが付けられている。一応、開いてみると、夏に海に行くための道具を購入したスポーツ用品店からである。筆者のメールアドレスを何らかの方法で不正に入手し、送付してきているわけではないので、たびたび問題となっているスパムの類ではない。確かに、一度はこの企業で購買をし、さらに「この場で申し込めば、合計金額が5%安くなる」という誘いに乗ってポイントカードなるものを作った記憶もはっきりとある。リレーションを一度は持ったわけだ。しかし、その申込書にあった「今後セールのお知らせなどの受け取りを希望しない」という欄にしっかりとチェックを書き込んだ記憶も残っている...。

購買や各種申し込みの際に個人情報の収集を行う場合、その後リレーションを持っていいか否かを確認する工程が欠かせなくなっている。実際、オプトイン(希望を取る場合)、もしくはオプトアウト(拒否を確認する場合)のいずれかはきちんとなされているケースが多くなってきた。逆にいうと、その最低限の態度を示さなければ、容易に個人情報は開示されなくなっている。

前述のケースで言えばオプトアウトを提示したわけであるが、問題はそれがまったく適切に運用されなかったことにある。おそらく、悪意があってのことではないだろう。単純にオプトアウトの項目を入力しそこなったか、メール送信の際にデータベースの設定を誤ったかのいずれだろう。しかし、顧客が自らの個人情報に非常にセンシティブになっている昨今、このような単純なミスが大きなクレームに発展することもありえる。仮にそこまでは至らなくても、ミスが継続するようであれば、私自身もこの企業との付き合いは再考せざるをえない。小なりとはいえ販売機会を喪失し、一人の顧客を離反させてしまうのだ。

個人データを取得し活用することは企業にとって大きな武器になる反面、リスクをともなっている。このことを、まずしっかりと認識すべきだろう。運用ミスによる顧客の離反、クレームの発生に止まらず、何らかの理由で個人情報そのものが外部に流出でもしようものなら、社会的な問題にまで発展してしまう。そのリスクを自覚した上で、それを上回る効果を見込んで実施がなされているのかという点を問いたい。特にEメールは、従来では考えられなかった消費者・顧客とのダイレクトなコミュニケーションが安価で簡便に行えてしまう。そのあまりの気軽さにリスクを忘れていないだろうか。リスクとトレードするに耐えうる、効果ある仕組みを作り上げた上で実施がなされているだろうか。

<集めるのは「いま」必要な情報だけ>
一方で、webサイトは企業からの情報が書かれているだけの看板的な状態から、何らかのインタラクティビティを持ち始めた。初歩的なところでは、各種の申し込みや登録ができる入力フォームが用意されたサイトはもはや珍しくはない。ところが、その申し込み・登録を受け付ける際に、ここぞとばかりに膨大なアンケートを取得しようとする例が散見される。答える側の気持ちで設計されているのか、疑問を感じざるを得ない。年齢、職業、年収、持ち家か否か、趣味、商品の購入理由...。大きなお世話だと思うような質問も多い。顧客は答えにくい項目に悩みながら回答を入力することだろう。これは確実に顧客に負担を与える行為となる。時間と労力だけでなく、ダイヤルアップなら経済的負担もそれに加わる。一定の割合で顧客は絶えられず、脱落していくだろう。もちろん、その脱落分以上に、入力させた項目を反映したすばらしいコミュニケーションが、強固に顧客を囲い込むのなら実施すべきかも知れない。しかし、本当にそこまで考えて実施しているだろうか。Eメールが安易な顧客へのプッシュアプローチを助長するように、この入力フォームは、ダメでもともとやモノのついでという安易な感覚で、情報開示と負担を顧客に求めることを助長する危険性がある。

当社は現在、CRMを中心としたコンサルティングとサービス業務を実施しているが、それ以前にも16年間にわたってダイレクトマーケティングを推進してきた。ダイレクトマーケターの教訓のひとつに、「使わないデータは取るな!」というものがある。これにはいくつかの意味があり、古くはハードディスクがまだ高価だった時代に、不要なデータで余計な容量を食わないようにという意味もあった。しかし、最も重要なのは、個人情報の開示やアンケートや項目の量に反比例してダイレクトマーケティングの命であるレスポンス率が下がっていくということである。回答者が回答を面倒だと思ったり、抵抗感を覚えたりすることをいかに低減するか、ダイレクトマーケターはその設計に腐心する。また、不必要なデータは先の例のように、不適切な運用を発生させる危険も内包していることも認識されている。まずは、このダイレクトマーケターの伝統的な知恵に学んでいただくことをお勧めしたい。

前項では個人情報やアンケートの収集にともなうリスクを提示し、結論としてそれに見合うリターンが期待できるかがポイントであると述べた。では、現在多くの企業が行っている施策において、その目標は達成できているのだろうか。答えは、多くの場合、否であろう。理由は消費者・顧客に対する認識が古い、もしくは甘いといわざるをえないからだ。

端的な例をご紹介しよう。筆者は半年前にある百貨店のカードを作った時にアンケートに回答した。趣味と購入検討商品を聞かれていたので、その頃普及論で言えば後期採用者か遅延採用者として、多少年齢の高い者でもチャレンジしていた「キックボード」と回答した。それから半年。もはやキックボードをやっている人はほとんどおらず、筆者もとうとうやらずじまいだった。そしていま、何をやっているかといえば、自宅の部屋の一角を書斎コーナーとして確保することに成功し、そこを好きなアンティークの家具や小物、OA機器で埋め尽くすべく、積極的な購買行動を展開している。つまり、筆者の場合はわずか半年で趣味や購入関心商品が、アウトドア系の比較的チープな価格帯から、インドア系の比較的高価な価格帯のものに180度変化してしまっている。にもかかわらず、昨日ポストにはその百貨店から「スポーツの秋フェスティバル」のDMが届いていた。おそらく、蓄積されているデータの上では、私は秋空の下で楽しげにキックボードに乗っていることになっているのだろう。

人は変わり続ける。半年、早ければ3ヶ月もあれば趣味や関心事など変わってしまうことは大いにありえる。誰しも自分のことを考えれば、それは想像に難くないだろう。しかし企業の担当者としては、一度せっかく収集した消費者・顧客データはそのまま大切に使い続けてしまうのだ。

<「自立型消費者」の誕生>
インターネットの登場によって、人の心の変化はさらに加速させられた。何より消費者と企業の関係が大きく変容した。それは「情報格差の消失」という大きな現象である。

かつて情報収集には手間と時間がかかり、個々人の持っている情報の質と量は、情報収集のスキルや人脈、熱意によって大きな差があった。そしてその違いによって、同じ商品を購入する場合でも、支払う対価がまちまちとなる現象が生じた。サービスについて詳しければ、大幅な値引きを引き出せるが、知識や情報がなければ値引は望めない。情報の多寡が一物多価の状況を生じさせていたのだ。

しかし、インターネットの普及によって、状況は一変した。専門誌を読まなくても、その業界の仕事をしている友人がいなくても、簡単に手間をかけずに、詳細な情報が収集できる。どこでいくらで買えるかもいくつかのサイトを覗きさえすればすぐにわかってしまう。もはや誰もがかつてのマニアやプロ並みの知識情報を持てるガラス張りの環境だ。 買う側が売る側と同レベルの情報を手に入れることができる。つまり、それが消費者間および消費者と企業との間での情報格差の消失である。

その環境は、かつてはマイノリティであったタイプの消費者層、「自立の消費者」を大量に増殖させている。自立型の消費者は購入プロセスのすべてを自己管理することによって、最も賢い購買行動をとることを志向する。関心のある商品の機能や価格を徹底的に調べ、自らが納得することを唯一の購買決定要因とする。彼らは販売側のプッシュセールスを極端に嫌い、情報の取捨選択は自らの価値観に合致するかどうかを基準とする。ともすればオタクでマイノリティ存在のみが持ち合わせていた傾向を、いまではインターネットユーザーなら誰しも程度の差こそあれ、ある程度は持ち合わせるようになっている。

元来、人の心は移ろいやすく、取得したデータをそのまま後生大事に持っていてもまったく意味がない。さらに、インターネットの登場によって消費者そのものが大きく変容をし始め、自立的な存在となっている。それに対応する方法はあるのか。答えは、次項としよう。

<適切性(Relevance)で顧客を誘導する>
消費者・顧客とのコミュニケーションに本当に必要な情報とは何なのか。ポイントは、前々項でも指摘した情報の入り口、個人情報の取得の方法にある。

昨年、パーミッションマーケティングという考え方が流行した。消費者・顧客に対し、コンタクトを行う許諾と、関心事を明確に聞き、望まれる関係性を構築・継続していこうというものであった。いささかプリミティブな感もあるが、その考え方は真理であるし、共感もできる。問題はそのパーミッションのとり方と運用の方法だろう。許諾を求められても、セキュリティやプライバシー保護の点で、およそ信頼できそうもないサイト環境では、とてもOKとはいえない。インターネットの初期普及段階のユーザーであればうっかり許諾を与えるだろうが、確実に増加している自立型のユーザーはうかつにパーミッションを与えないし、パーミッションのないままアプローチをすればすぐさまクレームが発生する。では、どうするのか。答えは前項において今後のコミュニケーション姿勢として説明した、ガラス張りの姿勢にある。パーミッションを得るためには、そのサイト、企業がどのようなプライバシーポリシーを持っているかを明確に提出する必要がある。さらにTRUST・eのプライバシー審査を受け、プライバシー・シールを掲げる努力も必要だろう。いまはまだその数は少ないものの、今後は審査を受ける企業が確実に増加するだろう。そうしなければ、自立化し賢くなった消費者・顧客とのインターネット上でのコミュニケーションは成立しないからだ。

さて、サイトの環境が整い、信頼とパーミッションを獲得した後は、どのようなコミュニケーションとサイトの設計を行うかが問題だ。前述のようにプッシュセールスを嫌う自立型の消費者は、自主的な意思決定を支援するプル型コミュニケーションを好む。自らが望むものを自らの意思で引き出すようなスタイルだ。

最近、効果的なwebサイトの設計手法として「ビジネスサイト型」が注目されている。自社のビジネスプロセスを洗い出し、webで実現できるプロセスの部分をサイトが担うよう設計する。その設計思想はどちらかというと、自主的な意思決定支援というより、企業にとって望ましいゴールを設定し、いかにそこまで誘導していくかという導線設計を重視している。

自立的な消費者には多数の選択肢の中から取捨選択する、ポータル型のサイトのほうが適しているかもしれないが、それでは企業にとって望ましいゴールにたどり着く可能性は極めて低く、サイトがビジネスとしての効果を発揮できない。となれば、理想的なのはプッシュされていると感じさせない、自然な誘導を行うサイト設計である。そのためには、考え方を少々変化させなくてはならない。

人は心地よく思えることなら拒絶はしない。ここでいう心地よさとは、自分にぴったりであると思えること=適切性である。CRM(=Customer relationship management)の"R"は、一般的にはRelationship(関係性)の"R"だが、このような自立傾向にある消費者の変化を考えるなら、Relevance(適切性)"の"R"つまりいかにぴったりだと感じさせ、離れさせないかという要素の方が重要となってくる。この要素こそ、消費者の意思よりも、企業サイドの何としても関係性を構築・維持しようという思惑が強く働く、既存の"Relationship"より適しているといえよう。

具体的な設計として望まれるのは、どうやってぴったりだと思わせ、ゴールに導くかというポイントである。消費者・顧客を企業としての望ましいゴールに導いていくためには、想像以上に数多くのデータが必要となる。そしてそれによる適切で適正な詳細セグメンテーションが基本となる。ワンtoワンコミュニケーションの基本は、実は詳細なセグメントとデータ活用にある。例えば、ワンtoワンのwebサイトを構築し、パーソナライズされたコンテンツを運営するためには、どのような属性や行動、アンケート回答を行ったかという顧客に紐付いたデータと、そのデータに応じて表示されるコンテンツ要素を組み合わせたルールというものを設計することが必要となる。当然、そのルール設計が粗ければ自分にぴったりとはならず、押し付けられているように顧客は感じることになる。しかし、同時に詳細なルールを設定のためには顧客に紐付いたさまざまなデータも必要となる。それだけのデータをどうやって取得するかも大きな問題となる。

前述したとおり、それを一度で取得しようとすれば顧客に大きな負担をかけることにもなるし、第一そのような聞き方に自立的な消費者が従うはずもない。方法は、「少しづつ顧客と繰り返すコミュニケーションの中で取っていく」ということだ。顧客から信頼感を得、ぴったりだという適切性を感じさせ、琴線に触れたコミュニケーションの中で顧客に問いかけをし、また行動履歴を蓄積していく。その結果、その顧客に対する最適なルールが作り上げられていき、さらにその顧客は適切性を感じ、結果として関係性が深まっていく。自社と顧客の適切な関係の中で育っていくデータ。これこそ価値のあるものであり、これからのCRMに欠かせないものであろう。

<長期的な友好関係構築のために>
最後に消費者・顧客との関係構築に有効な発想方法をご紹介しよう。カスタマーインサイトである。カスタマーインサイトとは顧客の心を読み解き、顧客の望むことを提供することであり、琴線に触れることである。CRMにおいてはカスタマーインサイトに訴えるため、以下の3つのコミュニケーションが重要となる。

Recognition●顧客データを使って存在を適正に認知すること
Time saving●顧客にとって利便性を提供すること
Peace of mind●顧客に心の平穏を提供すること

この3つの要素は図2の通り、「モノ」ではない「本質的価値」の提供に集約される。例えば、保険は保険証券という紙切れに価値があるのでもなければ、何千万円という保障金額に価値があるのでもない。万が一のときでも家族が困らないという安心感こそが本質的価値である。

保険を例にとり、カスタマーインサイトを考えてみよう。まず契約情報や営業マンとのコンタクト履歴などの各種データにより、顧客が家族構成や役職、個別認識されていることが最低限の基本となる。Recognitionは、転職や子供の成長などの転機に合わせて必要な保険の見直しができるようなコンタクトや提案がなされているかどうか。Time savingは、必要な資料が正確に届けられてたり、各種の手続きが簡単に変更ができるなどの利便性が提供されているか。そして最終的にそれらによって安心感を提供できていれば、Peace of mindを達成していることになる。

契約過程においてRecognitionとTime savingが満たされる保険商品の提示と、Peace of mindが満たされる納得と安心感を提供できないとしたら、それは顧客に対して本質的価値を提供できていないことを意味する。それでは顧客が契約し、対価を支払うことはないだろう。逆に、企業側や担当者側が本質的な価値を理解できていれば、顧客とのコミュニケーションにおいて必要な要素はみえてくる。そのために必要なデータも。この考え方が関連する担当者全てに共有できてこそ、適切な運用も実現できる。もちろん、それが実現できる組織になっているかというのも重要なポイントとなる。最終的には、トップの意識改革と同時に、ボトム部分である現場の社員の意識改革までもが重要になる。 (終)

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