販促施策成功のための必須要素とチェックポイント 第1回〜「日経NET BizPlus」 連載
- 金森 努
- 2003/05/29
[IT & マーケティングEYE]
今回より「CRM講座・実践の現場から」改め、「IT&マーケティングEYE」をお届けします。CRMという領域を越えて、より幅広い視点で企業や営業現場におけるマーケティング課題とそのソリューションについて論じていきたいと思っております。
起死回生策花盛りの昨今?
不況下の起死回生策というわけか、最近、一時期の停滞感を打ち破るかのように、様々な販促施策が再び展開され始めたように思える。首を引っ込めて通り過ぎるのを待っていてもどうにもならないと、各企業が認識したせいであろうか。その動きは一消費者としても、筆者のビジネス面でも有難い限りである。
しかし、よくよくその施策を見てみると、根本的なところで間違ってしまっているケースが見受けられる。当然結果も出ない。今回は、その間違いの原因を探りつつ、回避方法を述べてみたい。
こんな販促施策は失敗だ!
販促施策において、何をもって“うまくいっていない”と指摘するのかといえば、「企業として意図している収益を上げられる“しくみ”がうまくまわっていない」ことに尽きるだろう。
例えば、“○○キャンペーン”というタイトルは掲げられているものの全く盛り上がっていない。もしくは“笛吹けど踊らず”という感じで、企業の本社・本部が企画した販促施策に現場が全くついてきていないなどの状況がそうだ。
施策成功に最も必要なものとは?
答えを先に言ってしまおう。施策成功に最も必要なものは、全ての利害関係者(施策の立案者・実施現場・顧客)のコンセンサスである。実は、前述の“うまくいっていない販促施策のケース”の多くはトップダウン型の展開によく見受けられる。つまり、コンセンスがないままトップダウンで決定・実行された結果、現場が空回りし、顧客にも届かないということなのだ。
では、以下に“確実にコンセンサスを形成し、成功するための3種9項目の必須要素”を記そう。その要素を考慮し、施策を立案し運営していけば、立案者の意図が現場にも届き、活性化した運営体制のもと、顧客の反応も良好になるという好循環が生まれることになる。では、その要素を一つづつ解説していこう。
成功の必須要素1:プロジェクトマネジメント3要素の認識
成功の第一の要素は、やはりプロジェクトマネジメントの3要素をきちんと認識することだ。3要素とは、「スコープ=目標」「リソース=投下する人と予算」「スケジュール」である。もっとわかりやすく言えば、「何を目標として、誰がどれくらいの予算をかけて、いつからいつまで実施するのか」を計画段階から実行段階まで常に明確にしつづけることだ。
失敗している施策は、“販促”という全体目標は定義されているものの、具体的にブレイクダウンされた成果目標が定義されていないことが非常に多いのが事実だ。また、誰(及びどのようなチーム)がどのような責任を持って実行するのかという点と、実行予算が明確化されておらず、後追いで人員の投下と予算申請がなされていくケースも多い。さらに、短期〜中長期のスケジュールが明確化されておらず、ダラダラと進行していることも多々ある。これではうまくいかない。前述の3要素を明確化し、強く意識しつづけることで失敗を回避できることも少なくないだろう。
成功の必須要素2:ビジネスモデル的3要素の検証
“ビジネスモデル”が成立するかを検証する際には「戦略性のユニークさ」「オペレーションの実現可能性」「収益性の裏付け」の3要素をチェックする。販促施策を検証するのに“ビジネスモデル”を引き合いに出すのはいささか大げさな感もあるが、要素としては全く同じなのだ。つまり、「競合他社の展開と比べてユニーク性はあるか」「施策の運営は破綻をきたさないか」「施策の結果として収益は上がるのか」という要素を計画段階で明確化するのだ。この検証を事前に行うだけでずいぶんと施策の成功率は上がるだろう。
成功の必須要素3:ブランドマネジメント的3要素の検証
販促施策とブランドマネジメントとは、またまた距離感があると思われるかもしれない。しかし、実はこの要素のチェックも施策の成功率を向上させるために有効だと言えよう。ブランドマネジメントに必要とされる要素は多々あるが、代表的な要素に、「企業及び事業における事実と個性の定義」「戦略顧客の設定」「顧客ベネフィットとプロミス」というものがある。わかりやすく言えば、「自社及びその事業はどのような事実(=例えば同業種におけるトップシェアメーカーであるということなど)の上に成り立っており、その事実の上にどのような個性(=例えば先進性や安心感)を形成しているのか」「自社及び事業を理解し、受け入れてくれるであろうターゲットとなる顧客層は誰か」「顧客に対し提供できるベネフィットと、確約できることは何か」ということである。このような要素をどれだけ明確に定義しているかは、その企業がどれだけ厳格にブランドマネジメントを行っているかによるが、顧客に受け入れられ、存続している製品・サービスを有している企業であれば、概ねこの要素は持ち合わせているであろう。
しかし、こと販促施策を企画する際に、これらの要素がきれいに忘れられてしまうか、全く考慮されず、コンフリクトするような内容になっているケースが散見される。“その企業らしからぬ施策=事実と個性とのコンフリクト”“誰のためなのかわからない施策=戦略顧客の失念”“何がメリットなのかわからない施策=ベネフィットとプロミスの無視”などがその代表だ。これらのうち一つにでも該当すれば、その施策は顧客にとって非常に違和感があり、受け入れがたいものになってしまうのである。
最後の仕上げは“ミッションステートメント”の作成
施策立案に際してここまでのチェックを行ったとしたら、かなりの具体性を確保でき、各関係者のコンセンサスが図れただろう。では、最後の仕上げに取り掛かろう。それはここまでの内容を“ミッションステートメント”としてまとめることだ。それは関係者全員が実施すべき施策を成功に導くために“宣言”を行うことだ。「どのような市場環境と自社の背景において、何のために、どのような効果を期待してどのような施策を行うのか。それによって、どのような顧客が、どのようなベネフィットを享受でき、自社にどのような利益をもたらすのか。その成功のために、関係各者はどのような認識を持って、どのような活動を行わなければならないのか」。ステートメントのまとめ方には様々なパターンがあるが、概ね上記のような内容が網羅されている必要がある。そしてこれをまとめることができれば、関係各者の思い込みや同床異夢を排除することができ、完全にコンセンサスを得て一丸となって施策の成功に邁進することができることになるのである。
成功する販促施策の大原則=思いつきを廃し厳格な計画性を重んじること
さて、最後にまとめさせていただくが、前述の必須要素の項目3つづつをチェックしていただけば、当たり前なことに気付くだろう。つまり、計画段階において施策の成否はほとんど決まってしまっているのだ。そして、9つものチェック項目をクリアしたとすれば、それはほとんど思い付きではなく、厳格な計画性と明確な成功のための定義がなされた内容となっていることだろう。そして、ステートメントをまとめることによって、それはより明確化される。
好景気で右肩上がりの世の中であれば、思いつきの施策をどんどん展開し、その中の幾つかは奇抜さや破天荒さが受け、予想以上の大成功を収めたかもしれない。しかし、現在の低成長化においては“確実性”こそが求められる。施策の立案においても“予想以上の大成功”よりも“確実に確実に失敗しない計画性”こそが重要なのだ。今回のチェックポイントを是非ともご活用いただきたい。
