社内対立回避はプロジェクト成功の要? 第6回 〜「日経NET BizPlus」 連載
- 金森 努
- 2003/08/21
[IT & マーケティングEYE]
マーケティング部とシステム部は仲が悪い。“マーケティング部の女子社員とシステム部の男子社員の社内恋愛は成就する確率が極めて低い”というロミオとジュリエット的悲劇を引き起こすほどの極端なレベルかはともかく、程度の差こそあれ各社共通の事実ではないだろうか。筆者自身も以前勤務していた企業で経験し、苦労した覚えがある。
しかし一方、今日ではマーケティング・オートメーションが注目され、CRMなりSFAなり、ソリューションにはシステム的観点だけではなく、マーケティング・ビューが欠かせなくなっているのだ。
そこで今回は、どうしたらその両者の対立を防止し、プロジェクトを成功に導けるのかを考えてみたい。
ケース1:そもそもの同床異夢
なぜ対立するのか。部署・立場は違っていても社内のこと、社の発展は社員としての共通の認識であり義務であり、目的達成のために苦労も共有できるはずなのに。しかし、そのプロジェクトそのもののゴールの認識がずれていたとしたら…。いわゆる同床異夢の状態でプロジェクトが走り出したとしたら、両者は判りあえるはずもない。
ターゲットは誰で、どのようなマーケティング・ゴールが設定されているのかを、まず共有すること。「スコープ(目的)の明確化」はプロジェクトマネジメントの第一歩だ。それがあってこそ、どのような施策の展開が必要になり、その実現のためのシステム要求仕様はどうなるのかなどを落とし込むことが可能になるのである。
また、いわゆる仕様書的なマーケティング・ゴールの記述だけでは、情報レベルを越えた、意識面まで含めた本当の意味での共有はできないかもしれない。その場合は、そのプロジェクトの目的なり、メンバー全員で為すべき使命などを共有しやすい言葉でまとめた“プロジェクト・ステートメント”を作ることもお勧めしたい。
ケース2:主人公は誰?
当然のことだが、部門が違えば役割が違う。役割が違えば実行する業務も違う。等しく苦労を分かち合おうと思っていても、ある日はシステムが徹夜し、マーケティングが定時退社する。その逆もまたある。となると、本能的に担当者としては自分の背負い込む苦労を低減化しようという意識が働くものだ。
また、システム部はシステムを導入し、トラブルなく動かすことが主たる業務であり、マーケティング部は導入のための企画をし、導入後の運用にもコミットする。そのため、システム部はなるべく導入しやすいように、マーケティング部の要求仕様を軽くしようと抵抗し、トラブルのないよう簡単な運用で済まそうとする。しかし、マーケティングの要求は導入においても、運用においても高いレベルで譲らない。そこに対立が生まれる。
基本的にこのスタンスの違いの発生は食い止めることができないが、相手の立場をより理解することによる、“本能的な苦労の低減化行動”を和らげることはできる。
ポイントは、プロジェクト発足、もしくは発足の準備段階から両者がスクラムを組んで検討を行うことだ。問題のおこるプロジェクトの多くは、システム部にマーケティング部から後追いで依頼が入り、「勝手に決めて持ってくるな」という抵抗がおこったり、各々が別々に検討を進め、全く整合しない状態に突入してしまったりしているのだ。
部門を横断した“スクラム型プロジェクトチーム編成”を早期に立ち上げ、「プロジェクトの主人公は、部門を越えたメンバー全員である」という状態を作ることをお勧めしたい。
ケース3:仲裁できない企業トップと説明不足な担当者
本来であれば、対立する2つの部門の仲裁は企業トップに委ねたいところである。強力なトップディシジョンによる裁定。それが両者が納得できる大岡裁きであれば言うことはない。
しかし、現実にはそのように活躍できるトップは残念ながら僅かだ。なぜならば、ことシステムが絡むとトップは理解できなくなる。もしくは“専門外”として関与したがらなくなる。また、システムと連動したマーケティングのプロジェクトはほとんどの場合、“どのようなターゲットを、どのようなアプローチによってどう変化させゴールに導くか”という「プロセス型」であるのだが、結果や結論、ROIの予測のみを求め、プロセスを理解しようとしないからだ。
一般にシステム投資は巨額である。そしてその巨額な投資に対する英断までが自分の仕事であり、後は「果報は寝て待て」になっているトップが少なくないのが、残念な現実なのだ。
しかし、トップだけを責めるのは適切ではない。マーケティング、もしくはシステム担当者もトップに対する詳細な説明を怠っている場合が散見される。前述のプロセス、プロジェクトそのものの成功の見込みと失敗の際のリスク提示、そして何より、プロジェクトの発足とシステム導入の承認以降もトップが関与すべきであるという根本的な事実。それがなければやはり、マーケティング・オートメーションは“黙っていても自動的にうまくいくシステム”であるとの誤解が生じるだろう。そもそも、導入するのは“マーケティング・プロセスの遂行をアシストするシステム”であり、トップのディシジョンも含め、マーケティングとマネジメントが継続的に関与し続けなければ成功しないことを説明することが非常に重要なことなのだ。それがないまま、ある日突然、「うまくいきませんでした」といわれたら、トップも青天の霹靂、大きなショックを受けると共に、マネジメントとしての責任を問われる、悲劇の主人公になってしまうのだから。
今回は、プロジェクトの進行において、よくある部門間対立の代表格である“マーケティング VS システム”を取り上げてみた。しかし、実際のプロジェクトの進行には、この2部門だけでなく様々な社内のステーク・ホルダーが関与する。そして、同様に対立の構造を持っている。プロジェクトの成否は、いかにターゲットの気持ちを読み解くかという“ターゲット・インサイト”にかかっているが、実はこのような“社内の他部門に対するインサイト”も極めて重要なのだ。
プロジェクトは成功しなくては意味がない。参加賞はもらえない。とすれば、外にも内にも細心の注意を払って進めるべきだろう。今回のポイントを参考にして頂ければ幸いだ。
