電通ワンダーマン:コラム(DRM/CRM)

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部門ナレッジの品質向上が価値訴求の原動力になる TIPS★TIPS No.7

  • 加治 達也
  • 2003/10/16

[TIPS★TIPS]

ナレッジマネジメントが再び盛り上がりを見せている。今までのナレッジマネジメントの中心課題はIT偏重であり、「ITによって知識をどう管理するか」といった内容であった。そして実態と言えば、EIP(企業情報ポータル)やグループウェアの導入という形態をとることがほとんどだったが、それに対するアンチテーゼ、もしくは原点回帰として、シンプルでわかりやすい、ユーザーのためのナレッジマネジメントが実現されようとしている。

従来のナレッジマネジメントにおけるユーザーの不満
それらのシステムソリューションが実現してくれるものといえば、「インターネット、メールが使える」「有料情報サービスが利用できる」「関係者の稼動状況がわかる」「マニュアル、提案書、事例がすぐに取り出せる」「コラボレーションができる」と言うようなもので、“情報”と“ナレッジ”が混在している状況だ。そして実際には、利用者は「機能は多いが、コンテンツがわかりづらい」「使いづらい」「即効性に乏しい」という不満を持っていることも少なくない。つまり、EIPやグループウェアは、情報を広くカバーできる特徴が裏目となり、情報やナレッジの範囲が広くなりすぎて、内容が薄いものになってしまう傾向が否めないのである。

ナレッジマネジメントの原点回帰
上記のような状況を踏まえ、現在においては、ナレッジマネジメントのテーマは単なるシステム課題を離れて本来の姿を取り戻し、「企業として何を価値とし、どうやって価値を創造し、成長し続ける経営をするか」という、ダイナミックかつ企業経営の本質的な部分に触れている。
つまり、ナレッジマネジメント=価値創造の経営という理解が広く浸透し、実践においても、様々な手法が試行錯誤され、有効性が認められてきている。いや、むしろ実践段階においては、必ずしもナレッジマネジメントと呼ばれているとは限らない。「組織の再編成」や「業務プロセスの再設計」、「能力開発や人的資源のマネジメント」であったり、「システム投資」であったりする。そのあたりが、今日のナレッジマネジメントが浮ついたうわべの議論だけではなく、実態を伴った実行フェーズに移行しつつあるという所以だ。

大問題!ナレッジマネジメントの実践が後回しにされている部門の存在
しかし、上記のように、企業全体においてはナレッジマネジメントがうまく活用されるような良い兆候が見られるものの、大きな落とし穴が存在する。これまでのナレッジマネジメントの実践は、研究開発部門や、コールセンターなどが実践の中核とされ、本来最も活用されるべき“営業部門”は後回しにされていたのが実態なのである。確かに個々の営業スタイルには、提案型の営業からルート営業、「ブランドで売る」から「人柄で売る」まで、環境や文化風土が多様化しており、変革が難しい。しかし、企業の利益の源泉たる「営業」が全くナレッジで武装されておらず、丸腰での戦いを強いられているとすれば、これは由々しき問題ではないだろうか。

営業におけるナレッジ武装はなぜ必要か
営業現場でなぜナレッジ武装が必要なのか。ともすると「営業は小難しい理屈より足だ!」という鬼軍曹的な営業主任の怒声が聞こえてきそうだが、ここで少々整理しよう。

今日のようなインターネットの発達を背景とした情報社会においては、顧客(クライアント)や、競合企業も似たようなITツール・情報ソースを持っており、自社の製品/サービスは、あっという間に丸裸になってしまう。商談のイニシアチブを掴むためには、相手が知りたい情報を瞬時に把握し、自社の製品/サービスの価値を正しく訴求しなければならない。もはや「質の高いナレッジ」がなくてはならない状況にあるのだ。しかも、製品の保証期間も3年、5年と増える一方であり、製品をきちんと利用できる環境を継続的に提供しなければならない。つまり、その場しのぎの営業はもはや通じず、継続的な顧客との関係の中で、ナレッジを元にした価値ある情報のやり取りができなくては、アフターマーケティングで収益を拡大するという、今日的な営業としてはやっていけないのだ。

ナレッジポータルの構築と運用のポイント
では、どうすれば質の高いナレッジを蓄積できるのか。ナレッジの蓄積・活用においては、従来の多機能重視型から脱却し、「行き先掲示板」や「スケジュール」といった機能を排除する。まずは、シンプルかつ、ナレッジの活用に特化するポータル、「ナレッジポータル」として本格展開することをお勧めしたい。

以下、ナレッジポータルの導入・運用における代表的なポイントをご紹介する。

 (1)核となるナレッジを設定し、体系的に整理、優先順位付けすること。
 (2)ナレッジポータルとリアル(会議体、教育等)の連携を考慮すること。
 (3)新入社員や、中途社員でも、すぐに使える“わかりやすさ”を実現すること。
 (4)利用状況を把握し、利用者にフィードバックする仕組みを考慮すること。
 (5)目標管理システムや、SFA(Sales Force Automation)に記録されている定性データを分析し、
   ナレッジの抽出を行うこと。
 (6)初期段階では「とにかく質の高いナレッジを集めてみよう!」等々、スモールスタートを心掛けること。

部門単位の展開こそクイックスタートのカギ
上記のポイントの6番目にも挙げたが、営業部門のナレッジマネジメントを考えた時、特に“クイック&スモールスタート”を心掛けるべきだろう。研究開発部門と営業部門では時間の流れ方が違うとお感じの方も多いのではないだろうか。事実、研究開発部のナレッジポータルであれば、半年なり1年、場合によってはもっと長い時間を使って十分に仕様を詰めてナレッジポータルを作り上げることも良いだろう。しかし、営業部門でそれは許されない。長くて3ヶ月。早ければ、すぐにでも使えるようなものが求められる。では、どうしたらクイックスタートが実現するのか。

答えは、「部門ナレッジポータル」を立ち上げることだ。上記の6つのポイントは簡単なようだが、全社的に同時に展開しようとすると、実はかなりハードルが高いことに気付くだろう。また、全社的に共有すべき価値のあるナレッジを見つけようとすると、実は内容の薄い全体最適にしかならないことにも気付くだろう。だからこそ、営業部門だけの部門ポータルを立ち上げるのだ。

繰り返すが、キーワードは“クイック&スモールスタート”だ。この変化が激しく、スピードが求められる時代、このキーワードはナレッジにだけ当てはまることではないかもしれない。しかし、ことこの「部門ナレッジポータル」に関しては既にいくつもの導入成功例ができてきている。是非、貴社においても営業強化が課題となっている場合はご検討いただきたい。