あなたのビジネスの構造改革は? 第12回 〜「日経NET BizPlus」 連載
- 金森 努
- 2003/11/13
[IT & マーケティングEYE]
過日、ジャストシステム社のフォーラムにおいて、キーノートスピーカーである作家・猪瀬直樹氏の講演を拝聴した。「構造改革とは何か。〜日本が元気を取り戻すために」と題した氏の痛烈な官僚と族議員批判に満席の2,000人の聴衆は沸き、筆者も胸がスッとした。
しかし、「無駄なインフラ整備自体を自己目的化する構造が、この国をダメにしている」という鋭い分析は、政・官界だけの問題ではないと何割の人が気付いただろうか?我々のビジネスの世界でも「構造改革」を、我々自身が推進しなければならないのだと。
我々のビジネスは「構造改革」されているのか?
「インフラの自己目的化」――。このキーワードは重い。SFA、CRM、KM、ERP…企業が数々のいわゆる"ソリューション"を導入してきた時、本来インフラであるこれらのソリューションを、「自己目的化」させてこなかっただろうか。
政・官界の問題は「必要性、効果といったものを真剣に考えることのないインフラの整備が一人歩きしており、高速道路はその典型」(猪瀬氏)である。それに比べて我々のビジネスにおいては、本来はどこかの高速道路のように交通量の少なかろう所に道を作ってしまうような、「ニーズなき導入」はしていないと考えたいところだ。しかし、社内のニーズの重要度、優先順位、そして実現の難易度などを、本当に精査に精査を重ねて導入を決定してきただろうか。現場ユーザーを置いてきぼりにした開発・導入は行われてこなかっただろうか。疑問は残る。
あなたは官僚?族議員?
先に記したように、最も重要なのは「インフラを自己目的化させないこと」だ。ともすると、ソリューションを導入する担当者は、その導入自体を自らの仕事とし、十分な社内ニーズの検討もなく導入・稼動させることのみに注力してしまう。本来、社内システムをユーザーが利用することで「効果を上げること」こそが目的のはずであり、単に導入・稼動させるだけではなく、その目的を達成するために何をなすべきかを考えなければいけないのだ。
厳しい言い方をすれば、目的を達成する前の、単なる導入段階で評価され、安心しているのだとすれば、あなたはインフラを作ることを自己目的化している官僚か族議員のような存在になってしまっているということなのだ。
「構造改革」を行うためのステップとは
冒頭の講演で猪瀬氏は「インフラを自己目的化させないためには、顧客視点が重要である」と明言されていた。我々マーケッターの結論と全く同じだ。言ってみればごく当たり前なことなのだが、不変の真実である。
通常のソリューション導入の大きな流れを例示してみよう。
- 社内の問題点を洗い出す。
- 問題点を構造化し、それに対するあるべき姿を定義する。
- あるべき姿とのギャップを埋めるための、ロードマップとプロセスを設計する。
- そのプロセスを推進するソリューションを選定・導入する。
この一連の過程において、社内ニーズをきちんと引き出すことこそが「構造改革」なのだ。そのためにも、第一のステップから、すなわち社内の現場担当者の視点で問題点を洗い出すことから始め、常にその視点に沿って進めていくことが重要なのは言うまでもない。そして、実際の進行においては常に現場へのヒアリングを重ねていくことが必要となる。
選挙が終わって…
「構造改革」。この流行語ともなっているキーワードは、実態は「当たり前のことを、確実にやる」ということなのだ。それは政・官の世界だけではなく、我々のビジネスの世界でも全く同じだ。
選挙も終わった今週から、改めてこの国の構造改革は公約通りなされていくのかを厳しい目で見つめつつ、自らのビジネスも厳しい目で見直してみたい。
