モバイル新時代の“当たり前”とは? TIPS★TIPS No.8
- 菊地 克彦
- 2003/11/13
[TIPS★TIPS]
Webサイトは「あって当然」ではない時期もあった!
「御社はWebサイトをお持ちですか?」...などという質問をここでしたら、「え?当たり前でしょう!ナニ言ってるの?」と思われるだろう。当然だ。9 割を大きく超えて「Yes」の回答が来るはずなのだから。しかし、5〜6年前のことを思い出して頂きたい。「御社はWebサイトをお持ちですか?」という同じ質問に、「ええ、最近作ってみましてね。」などというどこか誇らしげな回答をもらうこともあった時代だ。Webサイトを持たない企業も少なく、ましてや“マーケティングコミュニケーションのツール”として、Webサイトを積極的に活用している企業は珍しいケースだったことが思い出される。
では今度は別の質問をさせて頂こう。「御社ではモバイルサイトをお持ちですか?」さて、今度の答えは「Yes」?それとも「No」だろうか?
モバイルサイトはまだまだ「あって当然」ではない?
2003年10月末時点で、携帯電話でのIP接続サービス加入者は6,700万人(※電気通信事業者協会HPより)に迫り、これはいわゆる“PCのネット人口”を追い越してしまう勢いである。前号の『Wunderman's view』でも紹介したが、電車内での携帯メール・Web利用が許可となる流れなど、携帯電話によるIP接続サービスは、もはや世間では“当たり前”のサービスであると位置づけられたようだ。
だとすればWebサイトと同様に、前述の質問に対して「Yes」回答が9割以上を占めるのだろうか?恐らくそうはなるまい。もちろん、消費者向けコミュニケーションが重要となる企業に限れば、モバイルサイトを活用している企業も多いだろうが、それでも過半数には届かないだろう。やはり現時点では、まだまだ「No」という回答が多数派となるに違いない。
モバイル・コミュニケーションの離陸は急上昇?
前述のとおりWEBサイトは、あって当たり前な今日において、モバイルサイトはまだまだ当たり前にはなっていない現状ではあるが、その状況は急速に変わりつつある。
筆者は、Webサイトの世界で97〜98年頃に起きたことが、いま、モバイルの世界で起きているという実感を持っている。つまり、Webサイトの導入が一部企業から大多数企業へ一斉に拡大、さらに、広報型サイトからマーケティング活用型サイトへと、その活用方法が急激に変化していった時期のことだ。
しかし、その変化のペースは当時とは比べ物にならないほど早い。なぜなら、Webサイトはインターネットユーザを同時に開拓しながらのサイト進化であったが、モバイルサイトでは、いま、すぐにコミュニケーションに呼応可能な6,700万人という巨大なユーザ層が既に存在しているからだ。
ある企業のモバイル・コミュニケーションを体験し、慣れ親しんだユーザが、同様のコミュニケーションを他の企業にも期待するのはもう時間の問題だろう。つまり、「○○社って、モバイルサイトがないの?」と言われかねない時代を、すぐそこまで迎えているのだ。
モバイル・コミュニケーションは少しばかりユニーク?
さて、これまで当社が担当した事例で、Web/モバイルサイトの両方を同一キャンペーンで実施した場合に、その結果を比較検討してみると、モバイル・コミュニケーションで見受けられる固有の『特徴』をいくつか発見することができた。
紙面の都合もあるので、モバイルサイト導入を検討している方の参考となりそうなポイントに絞り3点だけご紹介し、今回のTipsとしたい。
(1)モバイルユーザは「プライバシー」に特に敏感である
Webサイトとモバイルサイトの閲覧ログを検証した時に、殆どのPCユーザが無視する一方で、比較的多くのモバイルユーザが閲覧するコンテンツがある。「このサイトについて」「プライバシー・ステートメント」「申し込み同意書」などだ。
モバイルユーザがサイトのプライバシー・ポリシーなどに関心を持っていることを示しているが、携帯電話そのものが個人単位に帰属するプライベートな端末であることを考えれば当然の反応だろう。
モバイルサイトでは、Webサイト以上にプライバシーに気を遣ったうえで、それを態度、サイト上の表現でも表す必要があるのだ。その代わり、一度信用してもらえれば、資料請求時などのオプトイン率はWebサイトユーザに比較し、総じて高いようだ。
(2)「有料で情報提供をしている」という強い自覚が必要
当たり前のことだが、モバイルサイトの閲覧にはデータ通信料金が発生している。つまり、常時接続ではないため、モバイルサイトは「ユーザに一つ一つの情報が有料で提供されている」状態にあるということだ。無益なコンテンツと思われた時点で、ユーザは接続を容赦なく切断する。そのため、企業側は提供するコンテンツを十分吟味しなくてはならない。
逆をいえば、多くのユーザがサイト内を回遊し、コンテンツを閲覧してくれるようなサイトを提供できているとすれば、それは企業とユーザの良質なコミュニケーションが取れていることを意味する。そんなサイトでは、問い合わせなどのレスポンス率が高く、良質な見込客を獲得できることも多い。つまり、モバイルユーザはコミュニケーションに対して能動的であり、真剣であると言えるのだ。
(3)通話機能や地図情報など、モバイルならではのコンテンツを準備すること
例えば、モバイルサイトから実店舗へ誘導させるキャンペーンでは、通話機能(Phone to)を活用した問い合わせや、店舗地図情報などを提供することによって、高い来店効果を発揮した事例がある。
Web サイトでも地図情報を同様に提供したが、地図を携行させるには、まずはプリントアウトをし、それを忘れずにカバンかポケットにしまわせ、現地で取り出して再び見させるという、ちょっとしたことではあるが、いくつかのハードルが存在することになる。その点、携帯電話に地図情報をダイレクトに送り込めば、そのハードルを減らすことができ、Webサイトと比較して来店促進効果が高くなったのだ。
Webサイトのように大画面や高速回線を活用したリッチ・コンテンツや、多量の情報を提供できないからといって悩む必要はない。モバイルサイトの特徴を発揮できるコンテンツとは何かを突き詰めることが重要なのだ。
モバイルサイトが「あって当然」になってしまう前に
モバイル・コミュニケーションはまだまだ発展途上である。第3世代サービスによってコミュニケーションの可能性は大きく広がるだろうし、長期的な通信料金低下はユーザの向き合い方も変えていくだろう。ゆえに、前述のようなモバイル・コミュニケーションに固有と思われる『特徴』も変化していく可能性が大きい。
だからこそ、マーケッターはモバイルユーザとのコミュニケーションが企業にとっていずれ必須となり、将来に備えた経験と知見を積み始めるタイミングが『いま、やって来た』ことを理解しておくべきなのだ。もちろん、闇雲にモバイルサイトを準備すればいいわけではない。自社のマーケティング施策の中でモバイル・コミュニケーションの位置づけを検討し、まずは“必要なこと”、“できること”から始めてみればいいのだ。大切なのは、確実な第一歩を踏み出すことである。
