コラムコラム

電通ワンダーマン(エントリー)

営業の時代をどう生き抜くか−ナレッジによる営業強化 Wunderman's View No.10

  • 金森 努
  • 2004/01/01

[Wunderman's View]

起て!営業!!
景気がゆっくりと回復しているという。業績回復を発表している企業も多く目に付くようになってきた。しかし、その大半の実態は、「入りを計りて出を制す」という経営の大原則のうち、経費削減によって「出を制して」いるにすぎない。本格的な業績回復には何といっても「入り」を増大させなくてはならないのだ。

その意味からも、2004年は本格的な景気回復に向けた「営業強化の時代」であるといえよう。今回はその具体的なそのポイントを探ってみたい。

改革しがたい営業現場
営業改革というキーワードは、実に過去何度も登場しては消えていった。数年前のSFA(Sales Force Automation)ブームもそうだった。なぜ、営業現場は改革しにくいのか?それは、企業収益のエンジンとして、ある意味、聖域化されていることと、その活動内容の属人性によるものだ。「営業手法は習うより上司から盗め」などと言われ、OJTや実践の名の元に繰り返される根性論も散見される。実に、米国生まれのSFAソリューションもそのアナログさをシステマチックにすることはできず、多くが消え去る運命を辿ったのだ。

CRMから学んだこと
SFAは本来プロセスマネジメントである。そして、顧客に対するアプローチのプロセス及びタイミング管理はCRMの基本でもある。実は、SFAのソリューションと入れ替わる形でCRMのソリューションが企業に導入されていったのも、営業というファンクションだけに頼らず、コールセンターやWEB、E -mail等を駆使して本来あるべきコミュニケーションを実現しようとした結果に他ならないのだ。

しかし、CRMがうまくいかなかったケースの多くは、従来の人的ファンクションとCRMがうまく連動していなかった。むしろインターネットで完結し、オートマティカリーに顧客アプローチを実行する「eCRM」が指向された時期もあった。

一連のCRMブームから学んだものは、プラス面では適切な顧客選別とそれに対するプロセス管理手法だ。マイナス面は、やはり、人的ファンクションと人の持つ知識をもっと活用すべきであったということだろう。

ナレッジによる営業強化
SFAなり、CRMなり、適切にプロセスを実行するソリューションがあっても、顧客に対してどんなアプローチをすればいいのかが明らかになっていなければ、やはりうまくいかない。それこそが、今までの失敗例の典型だといえよう。「仏作って魂入れず」だ。

アプローチのノウハウ、もしくはナレッジは、多くの場合、個々の担当者の頭の中に眠っている。「勝ちパターン」が共有されていないのだ。いや、共有以前に、担当者の頭の中でもきちんと体系化されておらず、大半が混沌とした「勘と経験」のままだ。

大切なのは、それを一度吐き出させ、形にすること。そして、担当者各々が出し合ったものを整理し、体系化すること。つまり「勝ちパターン作り」である。単純化して言えば、それこそが営業現場におけるナレッジマネジメント(KM:Knowledge Management)の実践なのだ。

実はワンダーマンの場合も...
前項で「一度吐き出させ」と簡単に述べてしまったが、本当はこれは容易ではない。恥ずかしながら告白するが、当社ワンダーマンの場合もそうであった。広告業という業種は、ある意味、個人事業者の集まりのような組織であり、「企画力や営業力は先輩から盗め」なのである。だからこそ、いくら「ナレッジを出してくれ!」と言っても簡単に供出されるものではない。その事実に、ナレッジマネジメントに着手してみてはじめて気が付いたのだ。

では、どうすれば実践できるのか?
当社はいかにして解決を計ったのか。それは以下の通りだ。第一に社内研修と同期を図った。社内研修のテーマを決めて社員を講師に仕立てる。指名された担当者は講師として恥をかきたくないがために、自分の頭の中を一生懸命整理し、研修資料という形でアウトプットを作成する。それがそのままナレッジとなった。第二は褒賞と各種会議体での発表である。四半期毎に優秀な営業成績や先進的な事例に対する褒賞を行った。そのエントリーのために、各担当者は自分の手掛けた事例を整理する。また、全社会議、営業会議、その他各種会議において各担当者に成功事例・失敗事例の発表の場と義務を与えた。これによって、会議毎に整理されたナレッジが収集できた。

営業現場は忙しい。なので、単に「ナレッジを出してくれ!」と言っても絶対に出てこない。「吐き出させる」ためには、そのための「しかけ」と「場」を作らなければ、ナレッジマネジメントは実践できないし、営業力強化も実現できない。

この時代に
マーケティングを語る際にも度々引用される、英国のF・W・ランチェスターによる「ランチェスター戦略」。その基本の一つに「勝つためには兵力を増やし、武器の精度と習熟度を上げること」と記されている。昨今の人員削減傾向の折、営業担当者の増員は困難であろう。だとすれば、「武器の精度と習熟度を上げること」こそが重要だ。

武器とは扱う商品も意味するが、昨今の技術のコモディティ化を考えれば、商品だけの差別化で優位に立てる戦場は多くはないだろう。利益率を圧迫する安易な値引きもできまい。だとすれば、最後に頼りになるのは、営業マン自身の提案力。提案営業の巧拙が勝負の分かれ目になってくるはずだ。

「営業の時代」。この時代を生き抜くには、営業ファンクションが、個々の営業マン自身が強くならなくてはならない。それも、体系的に、科学的にだ。そのためには、形だけソリューションを導入するのではなく、自社の人的資産、知的資産をどう有効活用するか、戦い方を根本的に考え直してみる必要があるだろう。