ちょっと変だな、この販促2 TIPS★TIPS No.11
- 金森 努
- 2004/02/19
[TIPS★TIPS]
昨年12月のTips・Tipsで「ちょっと変だな、この販促」と題したコラムをお届けしたが、読者の方からもご自身が出会った「ちょっと変な販促」のメールをお寄せいただいた。そこで今月も、巷で目にした事象とその反面教師としてのポイントを探っていきたいと思う。
顧客を遠ざける会員化施策?
はじめに読者の方からいただいた体験談をご紹介しよう。「いつも利用していたスーパーが突然会員制を取り始めました。入会金500円ですべての商品が会員割引価格になるというもので、確かにお得なんですが、何となくわざわざ入会する気になれなくて、いつしか他の店を利用するようになってしまいました」。という内容だった。詳細を伺うと、そのスーパーが「コストコ」やダイエーの「Kou's(コウズ)」などの、いわゆるホールセールクラブに業態転換したということではなく、顧客の囲い込み施策の一つとして導入したもののようだ。
結果としてこの方は会員化施策には乗らずに、結局は離反してしまったわけだが、ここに一つの教訓が見て取れる。つまり、第一に入会のハードルが高かったということだ。昨日まで普通に買い物ができていたのに、急に500円の入会金が必要といわれたら、割引価格によってそれ以上のメリットがあるとしても、躊躇する方も少なくないだろう。そして、しばらくは非会員価格で買い物をするが、やがて損をしている感覚が強くなって離反してしまう。第二の問題点としては囲い込みを焦るばかりに、初期段階で入会させられなかった顧客にネガティブな印象を与えてしまい、結果として遠ざけてしまったことがあげられる。
会員化はダイレクトマーケティング、CRMにおいても定番中の定番の施策だ。しかし、その施策内容に関しては、十分な検討を行わなければこの例のようなことも起こりえることを認識しておきたいものだ。
ネガティブアプローチの危険性
最近の犯罪発生率の増加は、何らかの自衛をせねばという気に否が応でもさせる。そこで我が家もピッキング対策を行ったのだが、その経緯にはちょっとしたマーケティング的なTipsが隠されていたように思える。
筆者はピッキング被害のことは以前から気になっていた。そして、ある日ポストに鍵の交換などを勧めるチラシが投函された。チラシには、いかに今日ピッキングが増えて手口が巧妙化しているかということ、侵入された際の被害額の例などが記されていた。
しかし、ここで一つ問題がある。その業者は、自社でその施工を行いたいがためにチラシを入れてきているのだが、それらの内容がピッキングに対する恐怖訴求、ネガティブアプローチだけしかない。数多ある業者の中から施工を依頼する先を決定するための情報がないのだ。企業としての信頼性、施工の技術、対応の迅速性など訴求ポイントもあるはずだろうが、それらが伝わってこない。結果、筆者はチラシを入れてきた業者を選ばず、近所に店舗のある業者の所に話を聞きに行き、依頼したのだった。
この件は、恐怖訴求やネガティブアプローチは需要を喚起するものの、自社を指名買いさせるような訴求ポイントをセットで用意しなければ顧客獲得につながらないこと。あまつさえ競合に誘導しかねないことを示している。恐怖訴求やネガティブアプローチは保険やセキュリティー関連のソリューションなどには有効であるが、それを行う場合は、ターゲットに「自社を選ばせる」要素が訴求ポイントとして押さえられているかをチェックすることをお勧めしたい。
The Consumer, not the Product must be the hero.
先にお伝えした「顧客を離反させる会員化」も「ターゲットを取り込めないネガティブアプローチ」も、どちらも共通している点がある。それは、「どう売るか」という論理だけで考えられた販促となっており、顧客視点が忘れられてしまっていることだ。ともすれば忘れがちなことではあるが、顧客(生活者)を中心に考え直してみることでそうした過ちは防ぐことができるはずだ。
当社の創始者であるレスター・ワンダーマンも、“The Consumer, not the Product must be the hero.(主役は商品ではなく顧客でなければならない)”と、ダイレクトマーケティングの中心思想を述べている。主にプロダクトアウトな発想を戒めるためのものであるが、今回の「売り手側の思いこみによる施策」を考え直すためにも思い起こしてみるべき言葉だといえるだろう。
顧客を中心に考え直してみよう
我々マーケッターも仕事を離れれば、一生活者である。しかし、時としてそれを忘れ、売る側の理論で「変な販促」や今回のような「逆効果の販促」を行ってしまうのだ。施策立案時や施策展開前には是非とも顧客(生活者)の視点に立ち戻って再度チェックを行うことを忘れないようにしたいものだ。そのための具体的なチェックポイントを以下にまとめ、今回のTipsとしたい。
- ユーザーベネフィットが明確に設定されているか? → 顧客が得られる具体的な便益の説得。 契約条件やオファー等の金銭的メリットから安心感や信頼感といった情緒的メリットが具体的に設定され、顧客に伝わりやすく述べられているかに注意する。特に後述の2)のポイントと併せてそのベネフィットが「自社ならでは」の魅力を持っているかという点も重要。
- 自社の強み(コア・コンピタンス)及びユニークさの訴求ができているか? → 顧客がなぜ自社を選ぶべきなのかという理由の提示。競合との差別化ポイントが明確にされていること。 自社の強みがどのような背景で実現できているのか(技術や設立以来の歴史、アライアンス関連等)、加えて競合を含む業界においての相対的な位置関係と優位性などをアピールすることも理解を得る上で有効。
- ユーザー行動動線の明確な設定されているか? → 顧客にメッセージを受取った後にどの様に行動してほしいのかを明確に提示する。 レスポンスしてほしいのであれば、そのデバイス(フリーダイヤルURL)を明示する。来店や直接購入などを促すのであれば、1)のベネフィット訴求がきちんと受け入れられるものになっていることが重要。求める行動のハードルの高さの設定に注意。
- 顧客コミュニケーションのロードマップが設計されているか? → 顧客獲得・育成のプログラムが具体的な施策と同時に設定されていること。 施策単体で考えるのではなく、顧客の購買プロセスの中でどのように位置づけられるのか。また、見込み客獲得〜ロイヤル顧客化までの育成プロセスにおけるコミュニケーション計画を事前に構築しておくこと。
今回も販促施策の例をあげて、その反面教師としてのポイントを振り返る内容でお届けしました。今後も読者の皆様が体験された「ちょっと変な販促」をお聞かせ頂ければ幸いです。
