電通ワンダーマン:コラム(DRM/CRM)

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電通ワンダーマン(エントリー)

本当に“顧客の声”をいかすためには・・・・・・ 第24回 〜「日経NET BizPlus」 連載

  • 金森 努
  • 2004/05/13

[IT & マーケティングEYE]

今日に至る“顧客の声の吸い上げ”への取り組み
マーケティングにおいては市場の声、顧客の声を収集することの重要性は“イロハのイ”であるとされてきた。それは、かつての高度成長の終焉とともに起こった「プロダクト・アウト」への反省による「マーケット・イン」という考え方や、バブル崩壊以降のさらなる市場飽和期における「顧客中心主義」によって高まったものだ。つまり、今日、商品・サービスの開発はもとより顧客対応においても、個々の顧客の声に耳を傾け、その情報を吸い上げていくことの重要性は、多くの企業において概念的には浸透しているといえる。

さて、市場の声、顧客の声の吸い上げ方としては、いわゆる市場調査(マーケットリサーチ)によるものが代表的であり、年間に多くの予算を投じている企業も少なくない。一方、昨今、店頭やコンタクトセンターなど、各顧客接点に寄せられたダイレクトな顧客の声を集約・活用することも非常に重んじられている。また、それにともなってテキストマイニングのツールや手法なども日々高度化している。確かに、それらによって多くの重要な情報が吸い上げられるようになってきたのは事実だ。しかし、実はまだまだ現場には吸い上げられていない、現場の知識(ナレッジ)が数多く眠っていることにお気づきだろうか。

“現場に眠るナレッジ”とは?
テキストマイニングなどを行おうとした場合、重要なのは、顧客の声が文字通り“生の声”であることだ。そのため、その考え方が浸透している現場ほど、応対者の主観を廃し、顧客の生の声として話し言葉そのものを入力させたり、報告させたりしている。確かにその分析から得られるものは大きいかもしれない。しかし、同時にそれだけでは、それと同じぐらい重要な情報がスポイルされることになってしまう。それが、“現場のナレッジ”だ。

現場のナレッジとは、ともすれば切り捨てられがちな“現場担当者の主観”である。そこには主観的ではあるものの、大まかな傾向や、どのような応対が望ましいかという結果に対する予測、さらには現状では解決し得ない内容に対する問題意識などが、いくつもの顧客対応をこなしている内に暗黙的に蓄積されているのだ。個々の顧客の声が一律でないように、担当者の解釈も一律でない。ある担当者は、漫然と顧客対応の結果を“生の声”として報告しているだけだが、ある担当者はそれらから自分なりにより良い対応ができるよう、マニュアルを精読し、さらに自学し、自分なりの方法論を実践している。そうした担当者のナレッジならば、吸い上げる価値は大いにあるはずだ。そして、それらを集約・精緻化すれば対顧客施策を立案する際の重要な情報となり、また、応対マニュアルなどを再構築する際にも一役買うことができるのだ。

組織的かつ体系的な抽出がポイント
前述の通り“現場担当者の主観”は、市場調査や顧客の生の声の抽出などに熱心な企業ほど軽視されがちな傾向にある。逆にそれらをほとんど行っていない企業においては、担当者の主観だけを唯一の判断基準としているのが現状であるが、いわゆる“声の大きな人”の意見だけで判断されてしまっていることが少なくなく、結果として誤った方向性に走っている例も散見される。ポイントは、その抽出が組織的かつ体系的に、全社横断的になされているかどうかなのだ。

では、その様な担当者の主観に基づいた“現場のナレッジ”はどうやって抽出すればいいのだろうか。そこで、組織論的な問題点を同時に解決することもできるアプローチを次項にてご紹介しよう。

通常の組織においては、顧客応対の現場からの距離に比例してその情報が少なくなっていく。それを避けようと、前述の“生の声”の報告が励行されるわけだ。しかし、その生の声が報告されようとも、やはり現場から離れた階層における認識のズレはいかんともしがたい。そのギャップが対顧客施策の立案におけるムリ・ムダを発生させ、不適切な施策が実施されたり、現場におかしな指示が降りてきたいという事態を招く。それは企業全体で見れば大きなロスを生んでいることになる。つまり、これらを解決しなければ、単純に顧客の声を吸い上げても、何も解決しないことになるのだ。

同時に各階層のギャップを分析する
それを防ぐためには、まず、吸い上げられた顧客の声や現場のナレッジが正しくミドルやトップに向けて伝達されているかどうかを把握することが重要だ。そのための手法として「ギャップ分析」を行うことをお勧めしたい。

具体的には、現場、現場の管理者、本部の管理者、トップレベルの各階層において、顧客及びそれに対する応対の現状認識に関わる内容を一対一、もしくは少人数を対象にインタビュアーが詳細にヒアリングするのだ。日々の業務の内容から、自社の顧客像の考え方、顧客の声としてどのようなことを認識しているかなど、様々な内容を立体的に聞き出していく。もちろん、事実関係だけではなく、その担当者の主観・意見を引き出すことが大切だ。

この作業の過程において、対象者を現場担当者としたときには、前項の“現場のナレッジ”も発見・抽出することができるはずだ。そしてそれだけでなく、全体の結果を見てみれば、各階層における顧客に対する認識のギャップがおもしろいほどはっきりと発見できるのである。

景気は回復しつつあるといわれる昨今、しかし、まだ多くの企業は苦しい状況を脱しきれてはいない。そんなときほど、「顧客第一の原点に帰って」とか、「全社一丸となって」というスローガンが叫ばれる。しかし、今回指摘させて頂いたように、顧客の声の重要な部分が吸い上げられていないことも多く、また、各階層ごとに顧客に対する認識が同床異夢であることも少なくない。まずは現状から少しビュー・ポイントを変えてみることと、自社の現状を把握する具体的なアクションを起こすことをお勧めしたい。