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電通ワンダーマン(エントリー)

お気軽に調査をやっていませんか? TIPS★TIPS No.14

  • 金森 努
  • 2004/05/13

[TIPS★TIPS]

今日のマーケティングにおいて、もはや消費者・顧客調査は欠かせないものとなっており、その結果に応じて様々な戦略立案や施策の検討がなされている。また、調査手法の洗練と同時に、インターネットをはじめとした新たなメディアの登場によって、より手軽にクイックに実査を行う環境も整ってきたといえるだろう。しかし、その一方で手軽になった反面、本来しっかりと行わなければならない設計段階も、手軽にすませてしまっているようなことはないだろうか。今回は筆者が体験した、ちょっと不思議なアンケート調査を例に考えてみたい。

顧客であることを誇りに思う?
いつも行くスーパーのレジで会計を終えると、「アンケートにご協力ください」というチラシを手渡された。フリーダイヤルの番号がありVRS(自動音声応答装置)にて受け付けるので電話で回答してほしいと書いてあったので、さすがに大手GMS(総合スーパー)、マーケティングにも注力しているなと少々感心しながら、さっそく試してみた。

内容は、店の品揃えや陳列、店員の応対状況について質問項目が読み上げられ、それに対してYes、Noをプッシュボタンの1と2で入力するものであった。ごく当たり前な質問項目が続き、「VRSもレスポンスが良くなったものだな」などと変な感心をしながら淡々と回答を進めたが、次の質問項目を聞いた時に思わず耳を疑った。「次に文章を読み上げますので、あなたのお気持ちに当てはまるかどうかお答えください。1番、私はスーパー〇〇の顧客であることを誇りに思う。2番、スーパー〇〇なしには私の生活は考えられない。・・・」。この質問を耳で聞いた時の違和感は相当なものであった。(ぜひ、この質問項目の部分を声に出して読んでみていただきたい!)。

名誉ある会員組織や高級な百貨店、ホテルなどの利用に際しては、その様なこともあるかもしれないが、私は日常的に利用している、一スーパーに対して誇りを感じない。価格と品揃えに納得して通ってはいるが、仮にその店がなくなっても何とか他の店で代替がきく。何と大げさな・・・というのが正直な感想だった。当然、スーパー○○に対して筆者はそれほどまでの思い入れも持っていないので、Noと回答した。しかし、次の項目を読み上げられた瞬間、はたと気がついた。「3番、スーパー〇〇をぜひ知り合いに紹介したいと思う・・・」。この一連の項目は、回答者のロイヤルティを測ろうとする定番質問だったのだ。

定番の、定番であるがゆえの問題点
前述の質問項目も、質問紙を使用する自記式のアンケートであればさほど気にもとめずに回答してしまったかもしれない。しかし、読み上げられたことで2つの注目すべきポイントが見えてきたのだ。

1つは、質問項目とメディアの相性の問題。質問紙、VRS、Webの回答フォーム等、アンケートを行うメディアは今日、複数の選択肢があるが、回答者が質問に接して受け取る印像は各々によって異ってくる。特に前述の例の様に、音声で読み上げられるのと、文字を自ら読むのでは大きな違いであり、当然結果にも影響する。調査の設計段階で十分に考慮しておくべき点だっただろう。

もう1つは、いわゆる定番の項目を、定番であるがゆえにあまり考慮せずに使っている点だ。今回の例で考えれば、違和感を筆者が感じた通り、スーパーという業態を考えれば適していないのは明らかだ。同じ内容でも「1番、スーパー○○は私にぴったりだと思う。2番、スーパー○○がなくなったら困ると思う。3番、スーパー○○の品揃えや値段のについて知り合いと話したことがある。」というような聞き方であれば、違和感はなく、Yesと回答する人も多いだろう。筆者も1から3全てYesだ。スーパーの顧客で自覚的なロイヤルティを持ったり、リレーションシップを感じている人は少なく、多くはレスター・ワンダーマンがいうところの“Relevance”(最適性=自分にぴったりだと思うこと)を感じる程度が最上級なはずだ。だとすれば、それを前提に項目設計もしなければ、正しい結果は得られないのだ。

先に挙げた2つのポイントは、特に調査設計段階でやってしまいがちな間違いのチェックポイントとして活用できるだろう。いささか初歩的ではあるが、詩経に記された「他山之石、可以攻玉(他山の石、もって玉をおさむべし)」の教えに従ってご活用いただければ幸いだ。