お客さま紹介を再考してみよう 第30回 〜「日経NET BizPlus」 連載
- 金森 努
- 2004/07/29
[IT & マーケティングEYE]
CRMでも重要なMGMとは
ダイレクトマーケティングの定番的手法の一つにMGM(Member Get Member)というものがある。分かりやすく日本語で表現するなら、恐らくどなたでも一度は体験されたことがあるであろう、「お友達紹介プログラム」だ。
これは見込み客・顧客に対して、「あなたのお友達やお知り合いをご紹介ください」というメッセージとともに、何らかの謝礼を提示して見込み客・顧客を拡大再生産しようとするものだ。このプログラムはCRMにおいても顧客生涯価値を計る重要な指標の一つとされており、見込み客・顧客の中から紹介行動を取ってくれる割合を上げることによって、営業効率が高まるという重要な効果をもたらすと言われている。今回はそれを紹介する側・される側の生活者の視点で掘り下げてみよう。
安易に考えると失敗するMGM
先に述べたように、見込み客・顧客の中から紹介行動を取ってくれる割合が上がれば、営業効率は高まる。なぜなら、ある程度購入意向を持った見込み客がいきなり確保できるからだ。そのため、業種・業態にかかわらず様々に姿を変え、このMGMのプログラムが頻繁に展開されている。不動産、自動車、会員制サービス、カード、保険・金融関連等々・・・・・・。
しかし、実際にはこのMGMは安易に展開しても成功する確率は決して高くない。一番安易に実施されがちな失敗するパターンは、全顧客に対して一律に行うことだ。なぜ、失敗するのか。まずはそれを生活者視点で考えてみよう。
「紹介」とは言い換えれば、当該商品・サービスを友人・知人に勧める、「推奨行為」である。その商品・サービスの内容や価格にもよるが「推奨する」という行為は、高価なものや購入頻度の低いものほどリスクを伴う。つまり、自分が気に入っているものを推奨しても、相手もそれを気に入るとは限らない。その結果、その友人・知人との関係が気まずいものになるかもしれない。そのリスクを冒してまで推奨という行動を取らせることは、実はとてもハードルの高いことなのだ。
だからこそ、全顧客一律に展開しても失敗する。つまり、その商品・サービスに対して良好な体験を伴った満足度の高い顧客であれば、さほどリスクを感じず、自信を持って友人・知人を紹介するだろう。しかし、そうでない一般の顧客はリスクを冒してまで紹介はしない。つまり、「お友達紹介キャンペーン」を全顧客に展開しても極めて低いレスポンスに終わってしまうことが多いのだ。
正解は、一律にキャンペーン的に展開するのではなく、満足度の高い顧客を把握して、その顧客に向けて一本釣り的にアプローチすることだ。一度、推奨行動を取った経験を持った満足度の高い顧客は、繰り返し友人・知人を紹介してくれるという期待値も高い。
紹介謝礼の設定のしかたでまずは工夫してみよう
「紹介しても相手が気に入らなかったら・・・・・・」というリスクを気にする心理は、紹介者のみが紹介謝礼を受け取れるしくみの場合、より多く表れる。つまり「気に入らないものを、謝礼が欲しいがために押しつけた」と被紹介者である友人・知人に思われたくないという心理が働くからだ。
実はダイレクトマーケティングにおけるMGMの定石は、紹介した顧客だけでなく、紹介されたその友人・知人(被紹介者)にも同時にメリットを与えるプログラムなのだ。そうしたことで、紹介するという行動に対する心理的な障壁を下げることができる。「あなたも得になるから、よかったら紹介するするけど・・・・・・」という行動を取りやすくするのだ。
最近ではこのようなMGMの定石を取り入れたプログラムもいくつか目にするようになってきたが、まだまだ日本で展開されている多くの「お友達紹介キャンペーン」は紹介者のみがメリットを享受できるタイプのものが多いようだ。その点はまだまだ工夫の余地があるだろう。
軽いレベルでの推奨を促進する
企業に友人・知人を「紹介」という高いハードルの行動を起こすことはしなくとも、軽いレベルでの「推奨」を行う人は、実は数多く存在する。つまり、友人・知人が欲しているタイミングで、情報提供や情報交換・アドバイスを行うことだ。こうしたことは、ある程度話し好きだったり、社交的だったりする人にとっては当たり前なことで、本人はそれに対するリスクを感じてはいない。
自社の見込み客・顧客として囲い込んでいる中には、一定の割合でそうした人々が存在しているはずだ。それをうまく活用し情報提供を促進しない手はない。そのためには、提供すべき情報をうまく供給することが肝要である。具体的には「定期的なコミュニケーション」が重要であり、そのツールとしては「メールマガジン」や「会報誌」などが有用だ。コンテンツとしてはよくあるスタイルではあるが、自社の商品・サービスだけでは飽きられてしまうので、一般的な読み物やコラムを付加して「読み続けてもらうこと」が重要なのだ。そうして読み続けてもらうことで、近辺の友人・知人に情報が必要なタイミングがきた時、情報提供という行動が発動されることになるからだ。
一見オーソドックスな手法ではあるが、前項のMGMの定石である紹介者・被紹介者双方がメリット享受できるしくみと組み合わせると、高い効果を発揮する。また、MGMを高い満足度を持った顧客に対して四半期に一度など、キャンペーン的に実行することをカンフル剤として、見込み客・顧客全体にはこの情報提供のしくみを恒常的に用意しておくことによって両面での効果が期待できるだろう。
今回は見込み客・顧客にいかに紹介や情報提供という行動を起こさせ、営業効率を高めさせるかというテーマで論を進めてきたが、結論としてはやはり、紹介する側・される側の生活者の視点で施策を設計するのが一番重要だということだろう。自分自身で生活者の立場に立ち返って乗り気にならない紹介や情報提供のしくみでは、やはり失敗するのは必定だ。あくまで負担感がなく、自然なしくみ作りを心がけて頂きたい。
