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"Back to the Basic":「選択肢過剰」の時代にモノを売る方法

category
ワンダーマン・ニューズレター
writer
岡野 恵一
series
Wunderman's view No.24
date
2005年3月 3日
themes
顧客インサイト

各紙誌が枕詞のように記事の最初に使っている「景気が非常にゆるやかながらも回復基調にある」と言う言葉。しかし、マーケターとしても、一生活者としても、モノがよく売れ、消費が活気づいてきたという実感はまだほとんどない。なぜ、モノが売れないか。むしろ、生活者の視点に立てば、「なぜモノを買う気が起きないのか」ということに帰結する。今回はそこを考えてみたい。

一番の原因は「現在、われわれの周りには、あまりに様々な商品があふれている。」ということだろう。昨今よく議論されることではあるが、何かを買おうと思い立ったとき、われわれは"選択肢のあまりの多さ"に直面する。例えば、携帯電話を買う場合に、検討し得る選択の幅、機種の多さを考えてみれば実感いただけるだろう。固定電話機を選ぶ際の選択肢と比較すれば、その違いは明らかである。

われわれを取り巻く「選択肢過剰」
スーパーマーケットの扱う商品アイテム数の多さは高度成長期以降のことだ。それに加え、パソコンや携帯電話等のIT機器、洗濯機や冷蔵庫等の家電品から車、そして株や債権・投資ファンド等金融商品にいたるまで、それぞれの商品カテゴリーにおける選択の幅は10年前に比べるととてつもなく拡がっている。

さらにそれらを購入する際の情報取得の手段はインターネットの普及によって、多様な商品を比較・検討するための情報を簡単に入手できるようになった。それがまた、われわれの選択の可能性を飛躍的に拡大させている。

かつて、未来学者アルビン・トフラーは『未来の衝撃』(1970年)の中で、「皮肉なことに、将来、人は選択肢がないことではなく、選択肢が過剰であることに苦しむことになるだろう」と予見したが、消費生活で依然としてアメリカを追随している日本でも、この「選択肢過剰」は現実のものとなっている。

生活者は、あまりにも多い選択肢を前にして、判断基準を失い、最終的に何を購入したらいいのか途方に暮れている。消費行動を前にしてストレスを抱えてしまい、結果として消費意欲を失ってしまうという事態が起きている。これは、供給側の企業から見ると、このような消費行動が減退しがちな生活者(マーケット)に対し、競合商品との間でますます激しい争奪戦を演じなければならないことを意味する。さらに本来必要とされるモノは満ちあふれ「買わない」という選択しさえ手にした生活者の前に"勝者なき戦い"を繰り広げているかもしれないのだ。

いまこそ、顧客本位に立つ
こういう時代にあっても、いやこういう時代だからこそ、ダイレクト・マーケティングの基本セオリーに立ち還り、顧客志向を強化しなければならないのではないかと、われわれは考える。

「主人公は商品ではなく"顧客"である」(レスター・ワンダーマン)。顧客が何を望んでいるのか。どういう商品を欲しているのか。選択肢過剰=競争激化の時代にあっても、顧客が選択してくれるような商品を生み出すためには、何よりも顧客のことを分かっている必要がある。さらに商品を顧客に知らしめる有効なコミュニケーション方法を見出していくためにも、顧客の考え方や意識を「知る」ことは不可欠である。

顧客の"購買意向のツボ"を探せ
今や、顧客を「知る」ことの意味内容そのものも変えていかなければならない。顧客が何を望んでいるのかを的確に把握するにとどまらず、顧客に何を伝えれば(どんなインフォメーションもしくはインセンティブを与えれば)買う気を起こさせることができるのか。ストレスなく購買選択をうながす鍵は何なのか。言うならば、顧客の"購買意向のツボ"がどこにあるのかを知ることが必要となる。

"購買意向のツボ"、つまりはカスタマー・インサイト(消費者心理)をしっかり掴むこと。マーケティング・コミュニケーションの成否は、このカスタマー・インサイトの深い認識をベースに、顧客を、高い納得性のもとに消費選択へと誘引させられるかどうかにかかっていると言える。

高齢者層がほんとうに欲していたモノ
先ほど選択肢の多い商品ジャンルの一例として携帯電話を取り上げたが、携帯電話業界の中でカスタマー・インサイトを突きつめて成功した事例として記憶に新しいのが、昨年ツーカーセルラー・グループから発売された "通話専用携帯電話"「ツーカー S」がある。メール、インターネット、カメラ、TV、ゲーム、音楽再生等々、通話以外にも多様な機能満載でもはや携帯「電話」を超えて、携帯「パソコン」と化した感のある携帯電話の世界にあって、「ツーカー S」は時代に逆行するかのような携帯電話である。携帯電話登場時のディスプレーのない形状、機能も通話に限定、使い方もこれ以上ないほどにカンタンにしたまさにシンプルを極めた携帯電話だ。

ツーカーはこれまでも、機能過剰路線をひた走る携帯電話業界の大勢とは一線を画し、ムダを省き、必要十分な機能だけで勝負するという戦略をとってきたが、この「ツーカー S」ではその戦略をさらに徹底させ、これまで携帯を敬遠してきた高齢者層の取り込みを狙った。彼らは過剰な機能、機種の多さに戸惑って選択できなかっただけであり、使いこなせる携帯電話があれば彼らも買いたい欲求はもちろんある。

だから、この商品のマーケティング・コミュニケーションにおいては、不要なものをそぎ落とす「引き算のマーケティング」が求められる。彼らの消費意向を妨げていた「携帯電話=必要以上の機能を持っている=分かりにくい・難しく使いにくい」といったイメージを払拭していくことが重要であった。新しいターゲットである高齢者層に対し、「ツーカー S」はまさに"昔の黒電話を携帯電話にしたような商品である"という分かりやすいメッセージに徹底的にこだわったのだろう。

購買を決断した顧客の心理
多くのターゲットに「ツーカー S」を選択させ、購入へと導いたマーケティング・コミュニケーションにおいては、例えば顧客は以下のような心理ミックスとともに、購買決断しているはずだ。

「これはまさに自分たちのことを気にかけてくれている商品だ」=必要な機能だけに絞り込んだ、むやみと拡張しない商品づくりが、決定的に重要な"違い"を訴求している。

「この企業がつくっている商品に、共感できるようになった」=企業としてのビジョンや一貫したポリシー、売り手としてのこだわり、つまり過剰なものは人の生活にゆとりや満足を与えない。

「自分の生活の中での、使い方やあり方までもきちんとイメージできる商品だ」=これまで他の商品では過剰な機能に邪魔されて、自分の使い方や、生活の中で役立っているシーンなどが思い描けなかったが、この商品には、ライフスタイル提案や使い方提案まで含まれている。

「もっともコストコンシャスな商品だ」=価格は依然最も分かりやすい判断指標である。(発売時、オープン価格で4,000円を切った商品価格は "適正"と感じさせられた)。

現在、多くの生活者は依然として、過剰な選択肢のなかで、選択しきれないままに、消費を躊躇している。しかし、われわれダイレクト・マーケターはこういう状況においてこそ、原点である顧客本位の立場から、カスタマー・インサイトの深い認識を武器に顧客の "購買意向のツボ"に巧く働きかけるコミュニケーションを考え出していかなければならない。そうしたコミュニケーションを通して、顧客を、かつてのような消費する喜びとともに消費行動へと進ませることは可能であると考える。

"Back to the Basic"
前項までで話が終われば「めでたしめでたし。」ツーカーのマーケティングの勝利に見える。しかし筆者はいくつもの量販店で奇妙な体験をした。高齢者である知り合いに勧めるべく、前述の「ツーカー S」の詳しい話しを聞きに行ったときのことだ。「ツーカー S」のことを切り出すと、量販店の担当者は「確かにそれは分かりやすいですが、やはりすぐに使い方を覚えて物足りなくなりますので、私はドコモの"らくらくホン"をお勧めします」と、ドコモのコーナーへ連れて行こうとするのだ。

この現象を深読みすると、ツーカーは確かにカスタマーインサイトに基づいて物作りには成功した。しかし、流通対策に失敗しているのではないだろうかと考えられる。先にダイレクトマーティングの基本セオリーとして、レスターワンダーマンの言葉を引用したが、さらにマーケティングの基本中の基本、「4P」で解釈してみよう。

「ツーカー S」は4Pのうち、高齢者のニーズを汲み取った製品(Product)を作り注目を集めた。4,000円を切った商品価格(Price)も適切だった。「簡単で自分でも使いこなせる」というメッセージに絞り込んだ点(Promotion)も奏功した。しかし、最後の流通対策(Place)において、他キャリアよりも販売奨励金(マージン)が少なかったなどということはないだろうか。

もしこれが邪推でなく、どうしても量販店対策が後手に回るのであれば、この商品に限定して量販店との"チャネルコンフリクト"も避け、「直販」をやってみるという手はなかったのだろうか。高齢者は得てして新聞を熟読する。その新聞という圧倒的なリーチを誇るメディアで、「自分のための携帯」というメッセージを強力に打ち出した"直販レスポンスアド"を展開するという方法だ。

もし、今回取り上げた「ツーカー S」の例が筆者の思いこみであれば、ツーカー社には深謝したい。だがあえて例として取り上げさせていただいたのは、この「過剰の時代」を生き抜くためには、"Back to the Basic" 4Pという大学のマーケティング講義の一時間目に習うようなレベルまで立ち戻って、全てを考え直してみる必要があるのではないかと問題提起させていただきたかったからだ。これは、今日におけるわれわれマーケター全員の共通のテーマではないだろうか。

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