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電通ワンダーマン(エントリー)

クロスメディア展開におけるモバイル チャネル活用の視点  TIPS★TIPS No.46

  • 高丹 佑寿
  • 2007/02/15

[TIPS★TIPS]

生活シーンにおけるインターネットの浸透により、消費者を取り巻く情報環境が刻々と変化する今日、企業においては、コミュニケーション戦略を構築する際に消費者購買行動プロセスの変容を捕らまえることの重要性は広く認知されている。そのため、テレビ、新聞、インターネット、電子メール・SNS/ブログなど複数のメディアを活用し、相互に関連性・補完性を持たせることで広告効果の最大化を図る「クロスメディア」コミュニケーション展開が、企業コミュニケーション戦略における成功の可否を大きく左右する。

 消費者が企業のコミュニケーションに接触するあらゆる瞬間にまで焦点を当てる、このクロスメディア戦略において、「24時間30センチ以内に存在するメディア」であるモバイルが、コミュニケーション チャネルとしてますます重要になってきているのは、皆様もご存じのとおりである。

モバイルにおける消費者行動プロセスとは
インターネットの台頭により消費者の購買行動プロセスのモデル フレームは、従来のAIDMAからAISAS(Attention・認知/Interest・興味/Search・検索/Action・行動/Share・共有)へとシフトしてきたことは過去に幾度となく述べてきた。このISASは、基本的にはPCインターネットを軸とした消費者の購買行動プロセスのフレームである。このフレームが、モバイルを活用したクロスメディア コミュニケーションにそのまま当てはまるかというと、必ずしもそうではない。

 最近では、モバイルの24時間30センチ以内に存在するメディア特性をとらえた購買行動プロセスのフレームとして、AIPAS(Attention/Impulse・衝動/Push・携帯操作/Action/Share)が紹介されている。衝動購買が全購買行動の2割に達すると推定されており、購買行動を思い立ったそのときにレスポンスのデバイスとなり得るモバイルの特性上、「I」が「Interest」ではなく、「Impulse」に置き換えられるゆえんである。

 他のメディアにはないこの特性より、モバイルをコミュニケーション戦略に組み込むことで享受できるメリットは大きく次の3つである。

  1. 購買行動における瞬間的チャンス ロスの最小化
  2. 能動的な見込み客からの瞬間的、自発的な購買行動を誘発
  3. 気軽な口コミの誘発による、口コミ効果の最大化

このメリットをもとに、クロスメディア コミュニケーション戦略におけるモバイルの役割について考えてみたい。

消費者行動の瞬間的チャンス ロスの最小化
最近のニュースで見かけた、突発的・衝動的な消費者購買行動の効率的な刈り取りを可能にするモバイルの特性を活かした好例を紹介しよう。
 女性向けファッション ポータルサイトgirlswalker.comを運営する「ゼイヴェル」では、日本のリアルクローズを世界へアピールすることを目的に「東京ガールズコレクション」を2005年より開催。多数の人気モデルが着用する最新ファッションを、来場者がその場で携帯から購入できるようにした。

 人気モデルが着用しているファッションを目の当たりにすることで、いつも以上にオシャレを意識し、自分もモデルのように着こなしたいという衝動に駆り立てられることは想像に難くない。その衝動がピークに達した瞬間に身近なレスポンス デバイスである携帯から即座に購入できる手軽さが受け、開催のたびに完売商品が続出となる盛況ぶりだと聞いている。
(東京ガールズコレクション公式HP http://tgc.st ※モバイル・PC)

潜在見込み客からの能動的なインタラクションの誘発

AIPASフレームの「I」が「Impulse・衝動」に置き換えられるもう1つの理由は、モバイルが利用されるタイミングにある。ビデオリサーチ社の最近の調査によると最も携帯インターネットが利用されるのは、昼休み、移動・待ち時間、仕事・勉強などの休憩時、就寝前などの「隙間」の時間だ。そのため、1回ごとの接続時間は5〜15分程度であり、AISASのような興味(I)を喚起させた後、情報検索(Search)を行い、じっくりと検証することを前提としたフレームは当てはまりにくい。

 PC展開における潜在見込み客の能動的なインタラクションを誘発する施策としては、覚えやすく想起されやすいキーワード訴求、検索によりサイトに誘引して、サイト登録、資料請求、購買などの「Action・行動」を起こさせ見込み客を顕在化させる手法が目立つ。では、それを衝動的に起こさせるモバイルに置き換えると、どのような展開が可能なのか?

 各種資格の受験指導を行う大原学園のモバイルサイト「O-HARAモバイル」(http://o-hara.jp/)では、合格のためのコツや資格・試験情報、学習効果の高いコンテンツなどをユーザーに無料で提供しているほか、携帯からのアクセスが夜間に多いことに着目して、夜間限定で人気講師のプライベートな情報やオススメ書籍を公開している。また、試験会場などでは、入園案内パンフレットにモバイル サイト簡単アクセス コード(QRコード)を記載することで、サイトからの登録による潜在見込み客の顕在化を図っている。
 対象ターゲットの隙間時間に能動的なインタラクションを誘発する、場所・時間を選ばない携帯の特性を効果的に活用した事例といえよう。しかも、このモバイル サイトでは、PCサイトをしのぐ勢いでアクセス数が急増しているという。

気軽な口コミの誘発による、口コミ効果の最大化
携帯がPCサイトを上回るアクセス数を稼ぎ出している理由のもう1つは、口コミ効果である。
 消費者行動プロセスにおいて口コミが誘発されるのは、最後のS(Share・共有)以外に、モバイルでは衝動(I)喚起時がある。 常に身近にあるモバイルは、カメラやメール、テレビ電話といった付加機能により、その時々に合った方法で周囲の人々に容易にコンタクトが取れる利点があり、口コミ効果の拡散の一助となっている。

 先の「東京ガールズコレクション」の例では、イベント中に画像添付メールでやりとりしたり、テレビ電話でイベントの中継を行ったりすることで、イベントに来られなかった知り合いと情報共有が瞬時に行える利点がある。このようなイベントのコミュニケーション チャネルにモバイルを組み込むことで、イベント参加者の周囲の人間(見込み客であるポテンシャルが高い層)に対しても、イベント体感・商品購入を促すことが可能になる。

 このモバイル施策における口コミ効果を計測できるツールも登場。口コミ情報発信者からどのくらいの時間を経て、どのようにその情報が拡がっていくかを数値化・可視化することが可能となった。ご興味のある方は、次のリンクを参照されるとよいだろう。
http://www.d2c.co.jp/news/pdf/d2cnews1_07.01.17.pdf

今後ますます加速するモバイル インターネットのユーザー環境
昨年度より開始された番号ポータビリティ制度は携帯キャリアの価格・サービス競争の激化を引き起こし、モバイル インターネットにおけるユーザー利用環境の「低額・定額・高速化」を加速させている。
 NTTドコモでは、今年の春からPCインターネット サイト見放題の定額制サービスの導入を予定。3キャリアの足並みが揃うことになる。また、モバイル検索広告への取組みは、KDDIは米Googleと、ソフトバンクモバイルはヤフージャパンと連携した検索サービスを開始。NTTドコモでは独自検索エンジンの開発に着手しており、今年3月の広告商品化を目指しているという。

 モバイルのユーザー環境は日々進化している。コミュニケーション チャネルにおけるモバイルの機能、特にモバイル検索広告市場の動向を見るにつけ、モバイルの購買行動プロセス フレームにおいても「Search・検索」の概念が加わることは想定しておく必要がある。
 これからは、AIPASとAISASの2つの視点を持った上で、企業コミュニケーションのさらなる効率化・効果の最大化へ向けて、消費者の最も身近に存在するコミュニケーション チャネルの積極的な活用を検討されてみてはいかがだろうか。


*1 AISAS :電通グループが提唱するデジタル化による生活者の新しい購買プロセス モデル。AISASは株式会社電通の登録商標。
*2 AIPAS :参考文献「マーケターの仕事術」、末吉孝生・著、日本能率協会マネジメントセンター・発行
*3 その他の記載されている会社名・製品名は、各社の登録商標または商標。