「ダイレクト レスポンス アドバタイジング」によるブランディングとは Wunderman's View No.48
- 中野 暢子
- 2007/02/01
[Wunderman's View]
ダイレクト マーケティングを実践する企業が、今、レスポンスとブランディングの両立に高い関心を示している。昨年12月配信のTIPS★TIPSでは、「ブランディング レスポンス アドバタイジング(BRA)」を実施すべき投入のポイントについて紹介した。(http://www.wunderman-d.com/newsletter/tips/tt044.html)
そこで今回は、「『ダイレクト レスポンス アドバタイジング(以下、DRA)』によるブランディング」について、クリエーティブ視点からお伝えしようと思う。
「ブランドを語る」ダイレクト レスポンス アドバタイジング
ブランディングとは、顧客に数ある商品・サービスの中から、自社が提供するものを選択してもらうために企業が行う長期的なイメージ創造活動ことであり、購入プロセスの後半で初めて効果が現われるとされている。
例えば、あなたが保険への加入を決めたとしよう。数社の保険内容を比べ、大差ないことがわかった段階で、企業イメージ(ブランド)が選択の判断材料となる。そのため、レスポンスの獲得とは別に、企業イメージの向上と醸成を目的に投入されるのが、「ブランディング アドバタイジング(以下、BA)」だ。これは、一般にレスポンスの獲得を使命とする「DRA」とは相容れないジャンルの広告だとされている。
しかし、ある程度成熟した市場において、同じような商品・サービスが競合状態にある企業にとっては、ブランドが購買などの具体的な行動に結びつけるための差異的要素であることには間違いない。であるならば、レスポンスという行動の喚起を目的とした「DRA」に、ブランド要素を加味したものが高レスポンスを獲得する可能性は大いにある、と考えてよいだろう。
ここまでの説明で勘違いされる方も多いと思われるので断っておくが、同じ“ブランディング”でも、「DRA」における手法は一般的な広告のそれとは全く異なる。
例えば、環境への配慮や国や地域社会への取り組みなど、企業姿勢を積極的に伝えていくものが「BA」であり、企業が自ら発信する“良いイメージ”によって自社ブランドを醸成・確立していくことを目的としている。
しかし、良いイメージ・姿勢だけではモノは売れない。その場で行動を起させることが求められる「DRA」にブランディング効果を期待するのであれば、前述のような「BA」という考え方を忘れる必要がある。あくまでも「DRA」の視点から、“このブランドを選ぶことが自分にとって価値がある”と感じてもらえるような具体的なメッセージを、設定したターゲットに対し発信できなければ、レスポンスには結びつかない。
「DRA」によるブランディングとは、「企業が商品をつくる姿勢」を伝えるのではなく、「企業が商品・サービスによってもたらす対価」を伝えることなのだ。
広告上でのブランド体験
商品・サービスが持つベネフィットを「DRA」で訴求する場合、まずは“安い”“小さい”などの、具体的な機能に注目するだろう。その機能が優れていればいるほど、直接的な訴求を行うことで高レスポンスが期待できる。
この機能とは、競合と比較した際の「事実」として、商品・サービスを体験する前に知りうることができる顧客のベネフィットのことだ。対して、その機能というベネフィットの先には、ターゲットがその商品・サービスを実際に体験しなければ感じることができない、もう1つのベネフィットが存在する。
“この商品を買ったら、仕事がはかどるようになった”“そのサービスを受けたら、とても安心できた”など体験した顧客のみが持つ心情的ベネフィットがそれだ。つまり、広告上で「商品・サービスがもたらす対価」を伝えるということは、本来であればターゲットが体験して初めて感じる心情的ベネフィットを広告上の表現により擬似的に体験させることであり、この疑似体験こそが、「DRA」によるブランディングなのだ。
「DRA」によるブランディングが有効となる条件
「DRA」によるブランディングを実践するには、いくつかの条件が整っていなければならない。なぜなら、広告上で心情的ベネフィットを表現するということはメッセージがイメージに傾かざるを得ないゆえ、直接的な訴求と比べればレスポンス結果が低くなるからだ。よって、その条件がまだ整っていないのであれば、通常の「DRA」を実施しながら行動喚起につながる新たな切り口を探した方がCPR(Cost Per Response)も抑えられ、商品・サービスの売り上げにも貢献できるだろう。
ここで、その詳細を明らかにはできないが、前述のニューズレター(http://www.wunderman-d.com/newsletter/tips/tt044.html)でも触れていたように、まずは以下の2つの条件を満たしていれば、「DRA」によるブランディングを検討するタイミングにあるといえる。
1つ目は、商品・サービス自体の認知度がある程度得られていること。「DRA」によるブランディングを実践するためには、その対価が伝わるだけのステップまで登っていなければ効果が得られない。レスポンスを獲得するためには商品性が確立されていない、あるいは認知度が低い段階での実施は、訴求内容が散漫になり意味を成さないどころか逆効果となってしまう。
2つ目は、価格力や商品力などの機能が競合と差別化しにくい状態にあること。それらがまだ強力な訴求要素として存在するのであれば、あえてその訴求を切り替える必要はない。
本当の目的はファンづくり
- 「DRA」によるブランディングの役割とは何か
- メッセージがきちんと対価を伝えているか
- ゴールまでのストーリーが成立しているか
「DRA」によるブランディングに取り組む場合、「ブランディング」という言葉に引きずられることなく、これら3つのポイントを意識しておかなければ、レスポンスの獲得という本来のゴールは目指せない。そこで、事前に現在の「DRA」とレスポンス結果をいま一度検証・分析してみることをお薦めする。その結果、すでに土壌づくりが完成していると判断できるのであれば、取り組みを検討する価値があるだろう。
最後に、「DRA」によるブランディングとは、商品・サービスを通じて“ファン(優良顧客)をつくること”が、本当の目的であるということを、ぜひ覚えておいていただきたい。企業の認知度を上げることが目的ではないのだ。その目的さえきちんと理解していれば、きっと正しいダイレクトレスポンス アドバタイジングによる「ブランディング」に取り組めるはずである。
なお、3月1日に配信のWunderman's viewでは、以前に予告したように、「ブランディング レスポンス アドバタイジング」の手法と実践についてご紹介する予定であり、引き続きお読みいただければ幸いである。

