産学協同プロジェクト 2007 News & Service No.10
- 四十万 浩
- 2007/07/05
[News & Service]
ケータイを利用した“まちづくりプロジェクト”
昨年よりスタートした慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(慶応大学SFC)と電通ワンダーマンとの産学協同プロジェクトが今年も既に動きだしている。共同研究テーマは、携帯電話(ケータイ)を利用した“まちづくりプロジェクト”。地域あるいは地元と呼ばれる一定の経済社会・文化圏にフィールドワークを施し考察して、学生自らの感性で考案した新たな提案により、“まち”というフレームに刺激を与えていこうというものだ。
過去の研究から、“まち”にくりだした学生達は、当初傍観者としての地位しか与えられないが、コミュニケーションや、コンタクトの頻度を重ねることにより、やがて寄留者、そして新参者としての地位を付与され、地域構成員として地域あるいは地元の経済社会・文化圏で認知されるようになる、という仮説が立てられている。社会調査的な側面が多いとはいえ、昨今のマーケティングにも類似したステップやプロセスを踏むことの重要性を再確認できる。
中吊り広告として研究成果を発表
今年の共同研究では、この仮説をさらに昇華させ、また多様化させ、ステップやプロセスの精度を上げると同時に、地域というフレームづくり、まちづくりの提案をまとめていこうというものである。今回も学生たちはケータイを携えてまちづくり研究に向かう。時には写真を撮り、時には音を採録して、自分ならではのまちの発見をクリエーティブ作品に落とし込んで発表する。前期は、公共交通機関の中吊り広告として研究成果を発表しようという試みだ。それぞれに気付きや思いを巡らせアウトカム(成果物)として作品に仕上げる。
先日、その中間報告を授業の一環として当社で発表してもらった。どれもこれもさまざまに工夫を凝らした作品であった。メッセージ性という点では、誰にそのメッセージを届けようとしているのか、ターゲットが漠然としたところもあるが、プロである私たちにも大いなる刺激を与えてくれた。今回のテーマは湘南、作品の発表の場は江ノ島電鉄(江ノ電)の中吊り広告。情報には事欠かない観光地域ではあるが、彼らの作品には、確かに歩いて見なければ分からないまちの日常が、さまざまな角度から表現されていた。
当日の学生たちからのプレゼンテーションを聞いた、電通ワンダーマンのクリエーティブスタッフの感想を以下にご紹介しよう。
人を行動させる仕掛けにチャレンジしているのも注目
「同じまちに長年暮らしていると、いわゆる日常に埋没してしまい、時の変化や環境の変化にも気が付かない。本当は、その時の自分の気分によっても、まちは違うもののように感じるはずだ。例えずっとそこに暮らしていたとしても、今という瞬間を生きる自分自身とまちとの出会いは、実は一期一会なのかもしれない。
そんな、まちとの一期一会の奥深さを愉(たの)しませてくれるのが、慶応大学SFCとの共同研究だ。今回は湘南を取り上げ、その研究成果を中吊り広告という大胆な表現方法に凝縮させた。学生がフィールドワークの中で五感をフル回転させてつかみとった湘南のまちを、自分なりの想いを込めてコピーに書いたり、写真に撮ったりと、中吊り広告の中でそれが元気よく表現されている。
湘南らしいもの、逆に湘南らしくないもの、湘南のまちの表情をカオに例えてみたもの、カップルの動向を探ったもの、路地裏と地元に住む人のまち、心地よい音に着目したもの、まちの小さな変化など、今の時期だからこそ学生たちが感じるまちを私たちも感じ取ることができ、その着眼点や表現方法には感心させられるものがある。それだけでなく、意外性やインパクトのある表現に挑んでもいる。自分のまちであれば、どんな表現になるのだろう。今暮らすまちのことを改めて考えるきっかけにもなろう。ケータイを使って、人を行動させる仕掛けにチャレンジしているのも注目である。
私たちのアドバイスが、作品のブラッシュアップに役立てれば....。その成果と江ノ電で再会したい。」
(明石 智子・電通ワンダーマン・シニアクリエーティブディレクター)
第三者の視点に立って自分の作品を見直してみる
「毎朝、家の周辺をゆっくり散歩するのが日課になっている。だいたい同じコースを歩くのだが毎回必ず小さな発見がある。すれ違う人、動物、風、におい、音、色など、ささいな事ではあるがそれが楽しい。知らない土地での散歩なんて発見ばかりで考えただけでもわくわくしてくる。
そんな秘密めいた楽しみを味合わせてくれる慶応大学SFCの学生たちのプレゼンテーションだった。湘南を題材としたフィールドワークを江ノ電の中吊り広告で表現するという、リアリティある発表方法も非常に興味深い。どの提案も切り口は斬新で、ポストを擬人化し、ポストの視線で見た風景によるまちの紹介や、鎌倉の路地裏にフォーカスを当て、地元の人でなければ通らないような小道の紹介など、きちんと広告として成立している作品が多く驚いた。
全体的に共通して、第三者の視点に立って自分の作品を見直してみるというアドバイスをさせてもらったが、それがクリアされ、さらにエネルギー溢れる作品となって江ノ電に掲出されることが、今から楽しみで仕方ない。」
(鈴木 大介・電通ワンダーマン・シニアクリエーティブディレクター)
江ノ電車内での広告の掲出期間は2007年7月9日〜20日
この期間に地元の方や湘南を訪れる方には、ぜひ学生たちの感じた湘南を体験してもらいたい。もちろん私たちも、また当ニューズレターを読まれている方も足を延ばして、気軽な気持ちで彼らが観た湘南の日常を覗いていただきたいと思う。
*記載されている大学名および会社名は、それぞれの登録商標または商標です。
