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コミュニケーションの"全体最適化"への流れを考える

category
ワンダーマン・ニューズレター
writer
東井 良夫
series
Wunderman's view No.79
date
2009年9月 3日
themes
コミュニケーション戦略

"エコ"な時代のコミュニケーション
世の中"エコ"である。テレビを見ても町を歩いていても、トイレに入ってすらも"エコ"の表示が目につく。筆者自身のCO2の排出削減行動が世界の環境保全にどれほど役立っているのか実感としてはないが、正直者故にとりあえず気を配っている。

"エコ"は、筆者が生業(なりわい)とするコミュニケーションの世界でも求められている。ただ、正確に表現するならば、"エコ"よりも"適切な"もしくは"最適な"という方が当てはまるだろう。

数年前に比べて、周りにはインターネットや携帯電話を媒介とした情報の量が飛躍的に増えている。そのような情報過多の社会において、人々の情報に質を求める摂取態度の変容とも相まって、過剰なコミュニケーションに対して嫌悪感を覚えることも少なくなく、それらを抑制する意味でも「コミュニケーションの最適化=エコなコミュニケーション」の必要性が求められているのではないだろうか。

そこで、今回のニューズレターでは、筆者が最近お客様と接していてとみに感じる、コミュニケーションの"最適化"への動きを少しお話させていただくこととする。

これからは事業予算も"エコ"?
まず予算の観点からでは、コミュニケーションに関連する費用は、これまで広告宣伝、営業促進、コールセンター運営などの部門別に、経常的に予算化され、実行される企業が多く見受けられた。しかし、最近のマーケティング関連の記事などで1:5の法則(*1)や5:25の法則(*2)が紹介されることが増えたことから分かるように、新規獲得も顧客維持にかかわる施策もコミュニケーション事業として捉え全体で最適化を図るために、部門を跨った形で予算化されることが増えてきている。

無論、このような動きはこれまでにもあったが、この流れを加速させているのは昨今のコミュニケーションコストの圧縮への要求であろう。この圧縮されたコミュニケーション予算の中で、企業のマーケティングに携わる担当者たちは上層部から、年間を通じてより効率の良い戦術の企画・実施を厳しく求められているわけである。

"全体最適"の視点で考える"部分最適"
次に戦略面においては、コミュニケーション事業を総合的に捉えることが求められている。
コミュニケーションの"全体最適"には、コミュニケーション事業全体を俯瞰(ふかん)的に捉える部門が主管することが理想であるが、実際には多くの施策が商品・サービスの主管部署のリードで実施されるため、"部分最適"の域を出ない場合が多い。

ここでいう"部分最適"とは、「Webサイトのリニューアル」、「新聞折込やチラシのポスティング」などの単体でのアプローチを指す。例えば、新規顧客を獲得することが全部署共通のミッションであったとしても、Web担当部署でのミッションはWebサイト内での回遊率アップやWebサイト訪問者のコンバージョン(契約者獲得)アップとなり、Webサイトのユーザビリティーの改善などWebサイトのコンテンツなどの制作クオリティーに比重を置いたものになることが多い。「新聞折込やチラシのポスティング」では、レスポンス(資料請求)の結果に比重がおかれ、契約獲得までの全体を視野にいれたコミュニケーション施策とはなりにくい。

多くの場合、ダイレクトマーケティングの根底にある「潜在見込客の顕在化」、「顕在見込客の顧客化」、「顧客維持・優良顧客化」を一連のコミュニケーションと捉えることができずに、担当部署ごとに別個に目標設定し展開しているのが現状。そのため、それぞれの施策が部分最適に終わってしまい、全体最適の視点が失われてしまうのである。

また、別のケースでは、新規顧客獲得効率(Cost Per Acquisition)を意識するあまりに、Web媒体を中心とした施策に傾注していたところ、ブランドの認知度が落ち、ブランド効果が弱くなった結果、新規顧客獲得数の減少傾向が発生。また、資料請求から成約までの流れを検分したところ、途中での脱落率の高さも明らかになった。そこで、広告認知から成約に至るまでの流れ全体をコミュニケーション視点で見直し、プロモーションの戦略骨子を新たに作成し、そのための追加予算を引き出すまでになった。新規顧客獲得件数の減少を食い止めることから出発したプロジェクトも、視野を「潜在見込客」から「顕在見込客」、「顧客」までの流れ全体に広げることで、全体最適を図れるようになったわけである。

"全体最適"の実現のための条件と動き
最後に、全体最適への取り組みのためにはどのような要素が必要なのだろうか。

第一には、コミュニケーション全体の結果を評価できる環境が重要となる。
当ニューズレターの読者の皆様にとっては、これまでにも何度も見聞きしていることとは思うが、潜在見込客の発見から優良顧客化までの一連の流れ全体を1つの視点で捉え、それぞれのフェーズにおける、WebやDM、新聞、コールセンター、店舗などによる個々の施策を部分最適ではなく全体最適を視野にコミュニケーションの戦略・戦術を企画、実施、そして検証を行う。このようなコミュニケーション全体の結果を評価できる環境の構築が大切なのではないだろうか。

第二に、前述したように全体を俯瞰的に捉え、それを戦略として生かしていく横断的体制が重要となる。
クライアント企業においても組織的連携は見られるが、部門間の利害関係などまだ多くの問題を残しているようである。

しかし、昨今の企業動向のニュースに、全体最適を目指す動きが見て取れるようになってきている。新聞紙上でご覧になった方も多いと思うが、7月の終わりにトヨタ自動車が世界市場と国内市場のマーケティングを統括する100%子会社2社の設立を発表した。広告・宣伝機能とショールームや販売施設などの集客施設の管理機能を統括する、これらの取り組みはコミュニケーション全体の最適化への動きであろう。

多くの場合、会社の組織や機構はそう簡単に変えられるものではない。だからこそ、電通ワンダーマンでは、クライアント企業の顧客を戦略的な資産と捉え、顧客と企業の関係性を良好なものとするための、最適なコミュニケーションの戦略構築と戦術の実施、検証のお手伝いをさせていただいている。また、最近ではマス的なブランド訴求や交通広告がもたらす"つなぎの効果"や"相乗効果"の測定にも注目し、取り組んでいる。

最後に、これまで説明してきた動きを予見させるものとして、レスター・ワンダーマンが提唱する「成功する会社が知らなければならない20のルール」の11番目『メディアはコンタクト戦略である』をご紹介させていただく。

『大切なのはメディアから得られる測定可能な結果であり、露出量ではない。「リーチ」(広告到達率)や「フリークエンシー」(広告接触頻度)は時代遅れになってきている。関係構築を始められるのは、「コンタクト」(消費者との接触)のみである。 』

*1「1:5の法則」:新規顧客に販売するコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかる。
*2「5:25の法則」:顧客の離脱を5%改善すれば、利益が最低でも25%改善される。

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