自社の商品・サービスやブランドに対する顧客のロイヤリティを高めることは、マーケティングコミュニケーションの最大の目的の1つであり、その達成のために多くの企業においてさまざまな施策が行われている。
その1つに、消費者のブランド体験の機会を増やす施策があり、当社が専門とするダイレクトマーケティングのコミュニケーションにおいても重要とされている。それは、顧客が商品・サービスを購入した時点でコミュニケーションを終わらせるのではなく、顧客に対して継続的なコミュニケーションやブランド体験に「能動的」に参加あるいは行動させて、商品・サービスを恒常的に利用させることにより、「常に自分にベネフィットをもたらす存在」と認知させるとともに、商品・サービスやブランドへの「ロイヤリティ」を高めさせる施策である。
施策を成功に導くための第一関門であると同時に最も難しい点は、顧客にとって魅力あるブランド体験を継続的に提供すること、また、それに参加したくなる動機付けを与えることである。継続的であっても関係が一方的になり、顧客がベネフィットを感じにくいものであると、逆に「嫌われる」ことにもなりかねない。それを避けるために重要となるポイントを挙げると、次の2つである。
1)継続的なコミュニケーションやブランド体験が、顧客のベネフィットになっている。
2)ベネフィットが直感的に理解しやすく、心理的に共感できる価値を感じる、参加の動機付けとなるコミュニケーションがなされている。(キャンペーンや仕組み、タイトルなど)
継続的なブランド体験と直接的な顧客のベネフィットをストレートにつなげた例
では、これらを活かして成功した顧客向けキャンペーンの例を1つ紹介しよう。
大手食品メーカーが実施した顧客向けキャンペーンは、商品ラベルに印刷されたポイントシールを貯めて応募すると抽選で景品が当たるという、ごく一般的なものであった。景品も「花」と特に高価であったり、希少性のあるものではなかったが、仕組みのユニークさによって、顧客のキャンペーンに対する好感度を高め、多くの応募者を獲得することができた。その結果、既存顧客のブランドに対するロイヤリティ醸成と同時に、新規顧客の獲得につながったことから、その企業の顔となる定番キャンペーンとして長年実施されるに至った。
「安らぎや喜びが続く」というコンセプトの基に開発されたキャンペーンは、まさに一度当たると1年間、毎月季節の花束が届けられるという、今までにない息の長いものであった。これを、上記の成功のためのキーファクターと照らしてみよう。
1)毎月、企業から顧客に「花」が届けられることで、繰り返し行われるブランドとの接触と顧客のベネフィット(喜び)が直結し、企業に対する好感度の向上やロイヤリティの醸成が期待できる。
2)一度当たると1年にわたって景品がもらえるという他にはないベネフィットと、それを直感的に伝えるキャンペーンタイトルにより、「良いことなら一度だけでなく、何回もある方が良い」という普遍的なインサイトをくすぐることができ、応募への動機付けにつながりやすい。
以上の要因が、キャンペーンを成功に導き、当選者には継続的なブランド体験の構築を通じてロイヤリティ醸成に寄与したといえる。また、キャンペーンへの好感度や期待の高さから定番プログラムとなり、顧客に対する継続的なコミュニケーションとして「今年もまた、あのキャンペーンが始まる」という期待感を抱かせるようになった点も見逃せない。
顧客のベネフィットが継続的なブランド体験への参加の動機付になった例
次に紹介するのは、当社が行ったカード会員の継続的な利用の促進と利用金額の増大を目的とした施策である。この例では、継続的なブランド体験を顧客が能動的に行い、かつその行動自体がマーケティング上の課題をも解決するようになっている。
まず、カード会員は当キャンペーンに参加するにあたり簡単なエントリーの手続きを行うことで、もれなくオファーが提供される。その一度のエントリーであとは毎月一定の金額を利用しさえすれば、その後の6回の抽選に自動的に参加でき、高額な利用ポイントが当たる仕組みである。この事例を先のキーファクターに照らしてみると、
1)カードを継続的に利用しその金額を一定以上にすることで、高額な利用ポイントを手に入れるチャンスにつながるというベネフィットを顧客に提供することにより、カードの利用促進とともにロイヤリティの醸成をも満たすことができる。
2)最初にもらえるオファーが参加の動機付けになっていること。そして、最初にエントリーを行わせれば、その後続けて参加する確率が高くなる連続したプログラムの性格をうまく使っていること。また、立ち上がりがクリスマスシーズンであることから、うれしいプレゼントが夏まで続く意味のキャンペーンタイトルにすることで、一度だけでなく長くチャンス(6回の抽選)が継続するキャンペーンとしての理解を促せる。
このキャンペーンでは、先付けオファーにより誘引される能動的なプログラム参加と自動的に付与される高額景品の抽選への期待が、会員のカード利用の機会(ブランド体験)を増やすととものに、メーンカード化(ロイヤリティ化)への促進を図ることができたのだ。
継続的なブランド体験に誘導するキャンペーンの仕組みの例
次は、当社の海外オフィスで行った総合食品・消費財メーカーの事例を見てみよう。
このメーカーでは、自社の複数の商品を対象としたマルチブランドプロモーションの仕掛けとして、だれでもが分かりやすい「ビンゴゲーム」のルールを適用している。
CMやWebサイト、商品パッケージ上での告知を通じて参加を希望した顧客に対して、複数枚の「ビンゴシート」とアンケート用紙、景品が掲載されたブックレットなどが送付される。ビンゴシートは、食品、家庭用品などのカテゴリーで複数の種類があり、顧客はそれぞれのシート上に記載された商品と同じ購入商品に付いているシールを貼って「ビンゴ」を完成させる。
そして、完成したビンゴシートとアンケートを送付することによって、100ユーロ(約13,100円)のキャツシュバックをはじめ、電化製品などの景品のいずれかがもらえる仕組みである。これを先のキーファクターと照らしてみると、
1)指定された食品や日用品を購入してビンゴを完成させることは、いつも買う商品をそのメーカーのものにするだけで必ず景品がもらえるベネフィットを、顧客に提供している。
2)誰もが分かる簡単な仕組み(ビンゴゲーム)で参加できる点にある。また、景品のブックレットを手元に届けることでベネフィットをより具体的に感じさせることができ、参加し続ける(購入)動機を高めている。
顧客は、ビンゴゲームに参加することでそのメーカーの複数の商品ブランドを体験(購入・使用)することになる。そのメーカーの特徴としての多岐な商品カテゴリーから、顧客は普段の生活の多くの場面で使用することとなり、その幅広いブランド体験がロイヤリティの醸成に一層寄与できたのではないだろか。
また、提出されたアンケートにより、商品を購入してビンゴを完成させた、ロイヤリティをさらに高められる可能性のある顧客のデータベースの拡充や、さらなる関係構築などを図るロイヤリティ醸成プログラムへつなげる仕組みも見逃せない。
いずれの例も、ベネフィットと継続的なコミュニケーションが直結した仕組みと、顧客がベネフィットを感じて能動的となる「ブランド体験」を通じて、顧客と商品・サービスあるいはブランドをより強く結びつる「ロイヤリティ」醸成に大きく寄与しているといえるだろう。
昨今、消費者の購買行動においても「選択と集中」がより強くなる状況を鑑(かんが)みれば、顧客のロイヤリティ醸成への働きかけは、さらに重要になることは言うまでもないであろう。そのような課題の解決を検討されている読者の皆様は、ぜひ電通ワンダーマンにご相談いただきたい。


































